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携帯オンチ

 五十歳間近である山福さんはいまだガラケーを愛用している。
「私、アナログ脳だから。このままスマフォなんて一生使わないつもり」

 ただそれでも日常のこまごましたことに、携帯電話は使用している。
「メモ必要なときにすごく使ってるの。あ、けどメモ機能なんてついてないから、Eメールの下書きをメモ代わりに使ってて」
 休日に買うべきもの・友達の誕生日・etc...。
 たぶんスマートフォンにすればもっと便利な機能があると思うのだが、そこは人それぞれである。人には人の適切な方法がある。
 だが山福さんは最近ガラケーの使用自体も止めようかと考えているそうだ。
「あった方が便利なんだけどこの間から変なことが起きるようになって……。先月に友達と飲み会したときにね、パワースポットの話になったの。みんなで休みになったら旅行がてら行こうかって話になって。友達が確か○○っていう神社が有名だった言い出して。それでいつもの調子で携帯にメモしておいたの。神社の名前と日程を」
 飲み会の解散後、山福さんは夫にそのことを話した。
「旦那が言うにはどうも友達が喋っていた場所、パワースポットってより祟りで有名な場所だったみたいで。で、これは違う場所にしなきゃって思って」
 日程を確認しようとメモ代わりのEメールの下書きを開いた。
 メモの内容は狂っていた。

『・・・?、ア???潰れ・葬式・四月二十五日・・・??閻舌l?腐れ衛門』

「飲み会から家に帰ってくるまで、誰にも携帯触らせてなんかいないのよ。意味はわかんないけど……不気味で不気味で、なにか不吉な予感だけはするの、すっごく」
 結局旅行は中止にし、何事も山福さんの身に起きなかったものの、今までに三回、アドレスさえ文字化けした判読不能のEメールが届いたという。
 内容は三回とも同じだった。
『�???�ス?ョコ?ス?��?ュサ? ?豁サ血血血血血血血縺ュ 蜻ェ縺 』


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たぶん最後が一番の嘘

 これからする話はエイプリルフールらしく嘘である。嘘の話である。増永さんという男性は存在しないし、私が聞いた話ではない。ゆえに聞き手である私が通報すべき案件ではない。

 2013年5月のことである。
 増永さんは市内のパチンコ店から車で帰っていた。
 朝一から行って、四万も負けた。気分は最低だ。苦いものを飲んだような苛立たしさを持て余していたという。
 途中、尿意を感じたので公園に寄った。公園はやや小高い場所にあった。
 用を足すと改めて後悔の念がこみ上げてくる。
(あそこで止めておけば……)
(今月の生活費どうすればいいんだよ……)
(あのクソ店は二度といかねぇ)
 茫然と煙草を吸いながら、足元に転がっている石を蹴った。石は公園を飛び出し、数メートル下に落ちて行った。もう一度手頃な石を蹴る。石は落ちていった。
 少女の小さい悲鳴が聞こえた。
 増永さんは柵越しに上から覗き込んだ。
 中学生くらいだと思われる制服姿の少女が、しきりに周りを見回している。
 増永さんの胸中にむくむくと悪戯心が湧いてくる。
 少女の横に水たまりがあった。あそこに石を落としたら、水飛沫にさぞ少女は驚くだろう。そう増永さんは考えた。汚れる少女を見て気分を晴らしたい、そんな欲求だった。
 適当な石が見当たらなかったので、ベンチ下に落ちていたやや大きめな石を選んだ。蹴ると痛そうだったので、増永さんは数メートル下の水たまりをめがけて投げた。
 増永さんは言う。
 ――本当に傷つけるつもりはなかったんだ。ムシャクシャしてて、誰かのビビってる姿を見たかっただけなんだ。水たまりを狙ったんだよ、俺、マジで。
 だが石は水たまりには落ちなかった。
 ――ガキに当たっちゃったんだよ。
 増永さんは目を見開いたまま黙り込んだ。

 少女は幼児のように大声で泣き出したという。
(うわ、ヤッベェ)
 疑いようも無く、完全に増永さんの責任だった。
 焦った増永さんは慌てて階段を下り、停めていた自分の車に乗り込んだ。誰かが来る前に逃げなければと思った。
「賠償やら慰謝料やら」でお金をふんだくられるのはご免だ、と増永さんは考えた。
 バックミラーから確認すると、市役所行きのバスがやってきた。きっと少女が乗るはずだったのだろう。誰かが気づくだろうと思い、応急処置もせず車を発進させた。

 この手のタイプではありがちというか、増永さんは上記の出来事を数日後にはカンペキに忘れていた。だが一本の電話で思いだされた。
 電話の相手は疎遠だった地元の先輩だった。高校時代に付き合わざるえなかった怖い先輩だった。
「なぁ、お前さぁ、○○町に住んでんじゃん?」
 今時間平気か? と一応の確認をしながらも有無を言わせない雰囲気があった。
「……どうしたんすか」
「○○さんっていんじゃん」
 はい、と増永さんは答えた。
 ○○さんとは四歳年上の不良だった。今電話で話している先輩よりも、もっと怖い存在だった。挨拶は何度かしたが、個人的な話をしたことは一度もない。積極的に関わりたくなかったそうだ。
 ○○さんがAVのマネをして、舎弟二人に女を襲わせた事件はあまりに有名だった。
 今でも繁華街で見かけていたが、その際は必ず気づかないフリだ。
「もう知ってるかもなぁ。○○さんの妹さんさぁ、変態から石ぶつけられて入院してんだよ。重体よ重体。後遺症のこるみたいなんだわ」
 増永さんの背筋に電流が走った。
 確認するまでもなく、あの時の少女だと確信した。
 そんな大事になったいたのか。もしかしたら警察も動いているかもしれない。汗が噴き出た。
 だが平静を装って増永さんは答えた。
「マジすか。最悪じゃないすか……」
「あの人すごい妹さん可愛がってたから、それはもうキレまくちゃって。ぜってぇ犯人見つけ出して殺すって。で、俺らも協力するってことで、情報集めてんの」
「マジすか。自分も協力します」
 地元で情報集めてくれ、そんな指示を聞きながらも増永さんは、
(死ななくて良かったですね、なんてこと言ったらすげぇ怒鳴られるだろうなぁ)
 と他人事のように思っていたという。
 ただ電話を切った後に事態の大事さに遅まきながら気づいた。どう振舞うのが正解なのだろうか?
「いや俺もさ、嘘じゃなくて、ただ少女が大怪我して困ってるとかだったら、なんとかしたいなって思ったよ? 金を送ったりとかさぁ……。警察が捜してるんだったら、匿名で謝罪の手紙送ったりさぁ。けどこえー先輩探してんだもん。そんなの正直者になれないって、実際。法の裁きとか関係ないスタイルの人らだもん」

 黙っていれば誰にもわからない。バレるはずがないのだ。
 監視カメラ? そんなものがある都会じゃねぇ。
 警察だって怨恨以外の殺人には逮捕がスムーズにできない、と増永さんは言う。

 実際増永さんの想像通り、なにも起きなかった。
 警察からも〇〇さんグループから的にされることはなかった。
 だが二、三日後から、増永さんが壊れ始めた。

「最初は夜、便所に行ったときだったのよ。便所に入ってドア閉めるじゃない。バタン……って。便器座ってションベン始めると、音がするんだよ。音はちょうど閉めたばかりのドアの前から……。工場で聞くような、金属が擦れあう音がするんだ。
 ― ―ヒィー……ン。
 ― ―ヒィィィ……ッン、ヒィィィィィン。
 隙間風がたてる音か? って一瞬思ったけど……。
 とにかく立ったよ。ションベンなんてひっこんだ。ドアノブに手をかけて、音の発生元を見つけようと思ったんだけど、ドアノブを回せない。本能的っていうか……。おっかない先輩の前にいるときみたいに、余計なことをするなって本能が訴えるんだ。黙って、じっとして、やり過ごせって……。
 五分くらいして、ようやくドアを開けた。
 なんにもいなかった。
 ドアを閉めて電気を消した。
 いた。
 確かにいた。
 暗がりの中にぼうっと、小さい頭が。小児の頭が」
 
 増永さんは声にならない悲鳴をあげた。
 だがそのかすかな悲鳴に被さり、消し去るように、金属音に似た音は響いていた。
 ――ヒィィィ……ン。
 固まる増永さんに、頭は近づいてくる。近づいてくると頭の下が見える。首が見える。胴体は半分まで見える。
 いつしか座りこんでいた彼はまじまじと見つめていた。
 頭は女児だと確信した。
 先日、傷つけた女児だと確信した。
 こちらに思い知らせるかのように、抉られた傷跡が額から走っている。泥を思い切り蹴るとあんな感じの跡になると増永さんは言う。
 真っ黒の瞳をした女児は真っ黒の口を開ける。
 ―― ヒィィィィィン
 それは叫び声だった。苦しみをあげる悲鳴だった。
 肩から上腕は見えないというのに、指が見える。右腕の人差し指。こちらを指さしていた。 
 そこでようやく増永さんは意識を失うことができたという。

 後日知った。
『石がたまたま当たった』少女は小学五年生。○○さんの年の離れた妹。
 舞衣という名の女の子。
 石は彼女の頭蓋内にダメージを与え、右腕が麻痺する後遺症を残したという。
 幸いなことにというべきか、命には別状はなかった。
 時間が経つにつれ、熱の冷めた〇〇さんグループも犯人探しを諦めたと聞いた。

 が、増永さんの前に少女と思われる霊は引き続き出現した。
 昼の公園、パチンコ屋の便所、深夜の枕元。
 決まって指をつきつけているという。
「マジそんときは超病んだよ、俺。いつ現れるかわかんねーんだもん。不整脈が起きるみたいに、タイミングわかんなくて、もうそれに怯えるばっか……。眠剤もすげー喰ったよ、そん時。寝てれば見なくて済むから。けどそんなのやってたら仕事もできねぇし、親から金貰ってギリギリで生活してたし。だから一念発起して東京出てきたんだよ。正解だったね、マジで。食うのにも、女にも困らないわ」
 上京して以来、霊現象は体験していないというが、増永さんは「今も後悔している」と言う。


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 連休の前日、國松さんは飲み会でしたたかに酔い、新宿駅ホームを歩いている最中にホームから転落した。
「落下する感じに酔いが一発で醒めたよ。いやぁやっぱり落ちる瞬間に色々考えちゃうんだよなぁ」
 あぁこんな悲惨な最期なのか。
 冷蔵庫のイクラ食っちまえば良かった。
 ケンジのバイトの話聞いてないなぁ。
 ヤマさんと週末約束してたのに。
「不思議だよな、一瞬なのに。ただ落ちても電車はこなかった。痛みなんて感じないんだけど、もう恥ずかしくて恥ずかしくて。見上げるとホームで俺を見る人わらわら集まってきてるんだもん」
 慌ててホームに手をかけ、登ろうとする。
「大丈夫ですかぁ?」
「車掌さん呼んできた方が」
「おっさんヤバいね」
 という頭上から浴びせられる言葉に、國松さんは異常を聞き取った。
「死んでみせろ」
「思い出作らせろ」
 女性の声だった。どす黒い声だった。自信はないが二人分の声だったという。


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ちょっとした話

 次回のイワレ記事作成のため、新宿区戸山にある箱根山に足を運んだ。
 新大久保から歩いて二十分ほど。
 ティーンで混雑する韓国系のショップが途切れると、空気は急転する。インフルエンザが蔓延する教室に入ったときのような、目には見えないというのに、どこか空気が毒気を帯びている。ただこの毒気は、高齢者にはきっと届かない。生気と反対の位置にある空気。
 その中で歩く自分は場所柄、ガセ情報で裏風俗を探すにーちゃんにしか見えないな、と思いながら目的地を目指す。
 イワレ記事用の写真は別日の夜に訪れるつもりだが、昼間訪ねるとそこはどこにでもある春の公園だ。登山とは呼べない四十四メートルを登っても大した景色は見えない。団地が目前に広がるばかりである。

 だがこの場所では百体以上の人骨が掘り出されている。
 骨はドリルによるものと思われる穴開きや、ノコギリで切断された跡がある。
 人骨は、悪評高き日本軍の731部隊による人体実験されたアジア人である可能性が高い。
 四分の一は女性で、未成年者も含む。

 試しに何枚か写真を撮ってみる。
 ネットで見た体験談では昼間でも『白い女』や『人魂』が写るという。 
 だが撮影した写真には何の異変も無い。
 その代わり撮ったこともない、真っ黒な画像が四つ並んでいる。
 このこと自体、何の不思議もない。
 ポケットに入れている間、もしくは撮影する直前に誤作動し撮影ボタンが押されたのだろう。
 写ったのはポケットの暗闇。
 そう考えた。怪異とは呼べるわけもない。
 なんとなく写真の詳細情報を見る。
 撮影の日付は二月二十四日の金曜日、午後四時頃。
 思い出す。
 この日は平日。私は仕事中。脳裏に微かに警告音が鳴る。キィー……ン。厭な予感がする。
 思い出す。この日、私は携帯をアパートに忘れていった。
 メールを確認すればその日付で女から返信を催促するメールが届いていた。それに対応する私のメールもあった。
 
 となると――写真は誰が撮ったのだろう? いつの間に私の携帯に入っていたのだろう。
 泥棒が忍び込んで撮った? そっちの方がまだいい気もする。
 それでも月末までに再び私は箱根山を訪れなくなくてはならない。それも夜に。イワレの記事を更新するために。次回は一体何が写るのだろう? 

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 そして以下が本題である。唐突だが勧誘である。暗がりへのお招きです。
 ――こんなスリリングな体験、貴方もいかがでしょうか。
 正直に申しますと、世間で話題になる『パワースポット』があるということは、イコール『マイナススポット』もあるということです。
 このことわかるように参加することによるマイナスはあってもプラスは特にはありません。
 ですが――やや偏屈でも気立ては悪くない我々、貴方が参加してくれることを諸手をあげて大歓迎します。
 イワレは記事の投稿者を募集しています。


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