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異物混入

 池山さんは一人暮らし歴二十年の営業マン。今年で四十三になるが、まだ結婚は考えてない。
「なんか面倒くさくて、ははっ」
 だから毎度食事はもっぱら外食だという。ファーストフードに入る年齢でもないので、落ち着いた定食屋が多い。
「中目黒に引っ越して、行きつけの飯屋はなくなっちゃんだよね。あんまり好みの食堂がなくてさ」
 不本意にもコンビニ弁当が多かった。
 駅からしばらく歩いた商店街の外れにその店はあった。
「いい具合に寂れてて、メニューも好み。俺嫌いなんだよね、パスタとかサラダ置いてあるとこ。けどそこはサンマ定食とかアコウ鯛の煮付け定食とかあって」
 そこで池山さんはサンマ定食を頼んだ。値段は五百八十円。小鉢が二つついておかわりも自由となればかなり良心的なお店だ。店主は年老いた夫婦がやっていたという。
 ちょっと小汚い店の佇まいといい、丁寧な接客態度に昔ながらのメニュー、これは期待ができると池山さんは思った。
 棚にあった麻雀漫画を読んでいるうちに定食はきた。
 大根おろしに醤油をかけ、サンマの皮を箸で裂いた。身をつばんで米をかきこむ。
 ここの常連になろうと池山さんは思ったという。
 サンマの肝に箸を伸ばす。硬い内臓に力を入れて裂くと、中には肉片が覗いていた。
 一瞬目を疑ったが、それはどう見ても人間の指だった。成人男性の小指くらい細く、また第二関節くらいの長さだった。
「え?」
 池山さんの呻きに、店主の奥さんがさっと皿をつかんで下げた。腐ったような異臭が鼻をよぎった。
「それで新しいサンマ持ってきて……。奥さん何も言わないんですね。だって普通魚から肉片出てきたらあせるでしょ。謝罪するでしょ。けどそれもない。不良品は変えときましたから、みたいな澄ました顔しちゃって」
 もちろん池山さんは新しいサンマに手をつけられなかった。
 逃げるように会計を終えると、店外に出た瞬間怒鳴り声があがった。
「そりゃあま、魚の胃になにが入ってるかなんて店の人間はわかりませんけど。ろくに見てなかったら死体を口にしてたんですから、カンベンです」
 以後、池山さんは魚は切り身しか口にできなくなったという。

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