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誰も見えない

 関西地方の話である。
 元から木谷は霊感体質だったそうだ。地元にいると、彼曰く「変なの」が見えてしまうのが嫌で、進学する大学は地元九州から離れ関西地方を目指した。
 そんな木谷が大学生時代バイトを始めたコンビニにはこんな噂があった。
「入店チャイムが鳴っても客は誰もいない」
 木谷が初めて夜勤に入った晩だ。雑誌を読んでいたところ、チャイムが鳴る。
 バックヤードから出ると、木谷は噂が嘘だと知った。
 誰もいない、なんていうことはなかった。
 人ならざるものが店内を埋め尽くしていた。

 炭になった赤ん坊を背負う者、飲料水の売り場に佇む全身が焼け爛れた者、床を這う者、肘から先がないのに大の字で立ち尽くす者……。
 音はしなかったという。地獄の苦しみの中であろうが、呻き声すら聞こえなかった。
 床を這う者は目玉がこぼれ落ち、ぽっかり空いた闇を木谷に向け、ゆっくりと近づいてきた。
 逃げ出そうとするが体は動かない。
(掴まれる)
 心は焦るが体は思考とリンクしない。
 目だけが動かせた。
 下を見ると、床を這っていた者は口をぽっかりと開ける。歯も歯茎も舌も無い。
 木谷は先日テレビで見た「ドーンオブザデッド」を思い返したという。
 噛まれたら、どうなるのだろう。
 その時電話が鳴った。
 店長からの連絡だった。
「はい、はい。ええ。いえ問題ありません。大丈夫です。問題ないです」
 店長の心配する声に木谷はなぜか嘘をついた。動転しすぎていたのかもしれない、と言う。どちらにせよ翌日以降、そのコンビニに来るつもりはなかったそうだ。
 電話を切ると、目の前の光景はすっかり元の、無人のコンビニに戻っていたという。
 木谷は交代のバイトが来るとそのまま九州の実家に帰ったそうだ。

 現在は新潟の海沿いで社会人生活を送る木谷は「こっちは心地いい」と話す。
「海かな、海風が悪いもの払ってくれるんだよきっと。こっち来て七年だけど一度も変なの見てないから」
 だそうである。


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