怖い話 - 人から聞いた怖い話-実話恐怖話コレクション- ホーム » 怖い話 » 出遭う人

出遭う人

「ピンクなのよ、ピンク」
 織田さんは学生の頃、友人たちと山奥の温泉街に旅行した。
 旅館の周りを散策していると谷にかけられた吊り橋を見つけた。
 渡りたくなるのが人の性である。
 彼女たちは吊り橋を渡ったが、想像以上に歩きづらかった。風も強く、踏み出す足も震えたという。
 戻ろうと皆で決め、足をごまかしながら歩いた。
 理由はとくになかったが、織田さんは振り向いた。
 ピンクの腕が無数に織田さんに向かって伸びていたという。
「そういう時って絶句しちゃってなんにも言えないの。友達に伝えるなんてことは頭に浮かばないの。ただただ黙ったまま、見ていて、もう動けなくて」
 友人たちには見えないようだったが、織田さんの様子を見てただごとではないと感じたようで、固まった彼女を橋のたもとまで引っ張ってくれたそうだ。
 後に人から聞いたが、自殺の名所だったという。

「それは理科室にあるような人体模型みたいなピンクなんですか?」と私が聞くと、彼女は「火傷跡のてかったピンク」だと答えた。
「二度目なの。ピンクの腕を見たの。中学生の時に河口湖でも見た」
 彼女が早朝、友人と散歩に出かけたとき、湖にピンクの腕が見えた。
「そのままぼーっと見てたら、友達が」
 何やってるの! という怒声に織田さんはハッとした。
 気づけば膝まで湖に浸かっていた。
「やっぱり呼ぶのよね、ああいうのって。友達はもうビックリしちゃって、半泣きで私の腕を掴んでて『行かないで行かないで』って叫んでた」
 織田さんは解説を加えてくれた。
「きっと川とか水場には出やすいのよ。火傷したあとは、ほら、水を欲するじゃない」
 なお先日、織田さんは神田川でも軍人を見たそうだ。
 屈んで水を掬う動作を延々と繰り返していた。
「いつまでも熱いのが治まらないのね。お国の為に死んだっていうのに可哀想よ、終わらない地獄にいるのって」
 お話を聞かせて頂ける約束した時間は終わりに迫っていた。
 しかしまだ織田さんは怪異体験をしていると私は思った。
「またお話を聞かせて頂けませんか」
 彼女は髪をかきあげて、熱そうに紅茶を啜った。
「うーん、貴方のブログに載せられるような、ストーリーになってるのはないけど、お話にはならない単発の怖い話なら、たくさん」
 彼女は四十代のしっかりとした大人の女性である。
 到底嘘をついているようには思えない。


ブログパーツ
コメント
非公開コメント

そうかな?凄く演技がかたオバハンだと思ったわ

2013-09-29 17:21 │ from 名無しURL

トラックバック

http://kowahana.blog.fc2.com/tb.php/136-ccbcaa4f