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ソーシャル・ネットワーキング・サービス

 後藤さんは一時、Twitterにはまっていたという。
 仕事上の知り合いや友達の友達に留まらず、趣味の食べ歩きや古着を軸にフォロワーはどんどん増えていったという。
 見ず知らずの人の愚痴に同情したり、逆に体調が悪いと呟くと知らない人から「体調大丈夫ですか?」と心配されたり、コミュニケーションがどんどん楽しくなっていった。
 ある日友人の「今日行ってきた韓国料理店が美味しかった!」という呟きに、後藤さんはいいなぁと反応し、ここに行きたいと何とはなしに呟いた。池袋の店だったという。
 すると一人のフォロワーが「そこ、知り合いの店です。よければどうですか」と後藤さん充てに呟いた。共通のフォロワーも「いいですね! 私も行きたいです」とそれに賛同した。後藤さんが決めかねている間に、すっかり数人でオフ会をする雰囲気になっていったという。
 言い出しっぺである李と名乗る台湾出身の男性が日付と時間を提案した。
 後藤さんは迷ったが複数であることの安心感と、料金が知り合い価格になるという誘惑にまけて結局行くことに決めたという。
 当日、後藤さんが待ち合わせ場所に向かうとそこには、腫れているような一重に薄い唇の、いわゆる「大陸顔」の背の高い痩せ型の男がいた。
 店へ歩きながら「他のみなさんは?」と聞くと、後二人遅れてきます。店で直接待ち合わせ。そう李さんは告げたという。
 男性と二人きりになることに抵抗はあったものの、悪そうな人間には見えなかったし知り合いの店であれば変なこともしてこないだろう、そう後藤さんは算段した。
 韓国料理店につくと李さんはTwitterをチェックした。
「あー。二人、もう少し遅れるそです。あと三十分ほどだそです。先にカンパイだけして待ってましょ」
 と言った。
 ビールとごく軽いつまみを注文し、お互いに自己紹介をしあったという。
 二十五歳と李さんは言ったが、もっと上に見えた。驚くことに音楽の趣味も映画の趣味も似通っていた。会話は楽しくすぐにビールは空いた。
 おかわりは他の人がきてからにしようと後藤さんが思っていると、店員が大皿と壺を運んできた。
「これは?」
「ガマンできなくて、頼んじゃいました」
 悪戯っ子のように李さんは笑った。
 壺にはマッコリが入っていた。白く濁っているそれは後藤さんは一度飲んだことがあった。酸味が強く炭酸があり、どちらかといえば苦手であった。
「これとっても美味です」
 初めて見る料理だった。円形に並べられた厚い豚肉はすでに茹でるか蒸してあった。中央に白菜が山積みされてある。kろえで肉を包んでキムチをのせて食べると説明された。
 後藤さんは勧められるがままマッコリを飲んだ。
 名前のわからない、その料理にとてもマッチしたという。
「あんなことがあっても、あの料理だけはまた食べたいって思うんです」
 酔いが回る前に後藤さんは用意していたヘパリーゼの錠剤を飲んだ。李さんにも勧めると「いらない」と笑っていたという。

 寝入る瞬間のことは覚えていない。ちょっと頭が重いな、と思ったら次の場面にジャンプした。
 真っ暗だった。
 後藤さんは携帯を取り出して時間を確認しようとするも、両腕が手錠で縛られていたという。
「あだぷた、あだうた」
 暗闇の中、そう男の声が聞こえた。反射的に叫んだ。
「助けて! 手錠外して!」
「たうころ、でん」
 発音から日本人でないことだけは理解した。言葉の意味はわからなかったが、それは「ダメだ」や「ノー」や「ノン」と同じ否定のニュアンスであったという。
「李さん? 李さんはどこですか? 一体なんなんですか。警察に」
 最後まで叫ぶ前に、体重をかけた男の足が胸に振り下ろされた。
 視界がきかない中の痛みは強烈だった。後藤さんは涙がぼろぼろ零れ落ちるのが止められなかった。吐き気が止められず後藤さんは吐瀉物を床にぶちまけた。さきほど飲んだマッコリが鼻を曲げるほどの臭さになっていた。
「いいえ、か、はい、か、それだけ、こたえる」
 男の言葉が拙いせいとすっかりパニックに陥ったせいで、意味をしばらく後藤さんはつかめなかった。
「イエスかノーって答えろってことですか?」
 聞き返すと手を踏まれ、後藤さんは小さく悲鳴をあげた。「いいえ」か「はい」しか口に出してはいけないと理解したという。
「まえに、ふるぎや、いったか」
 前に古着屋に行ったか、頭の中で後藤さんは変換した。
「はい」
 ぶんぶんと頷いた。
「くろの、じゃけっと、かったか」
 正直はっきり覚えていないが、たぶん買っていたと思う。
「はい」
「ぽけっと、はいってたか?」
 わからなかった。質問の意図はなんとなくわかった。この男が探す何かが古着の中に紛れ込んでいなかったか、ということだ。けれど後藤さんは覚えていなかったという。
 しかしいちいち古着のポケットはチェックしない。確認していないだけで入っていたかもしれない。記憶は消える寸前のロウソクのように曖昧だった。
 正直そう答えたかったが、また殴られるかと思うと口は動かせない。
 そこで後藤さんは答えなかった。眉をこれでもかと顰めただけだった。態度で伝わることを願ったという。
 無理だった。
 野球ボールが飛んできたかと思うほどの衝撃で後藤さんはこめかみを殴られた。
 目の前で火花が散った。
「そゆの、きらい」
 一撃は後藤さんの考える気力をあっさり奪った。お金なら全てあげるから解放して欲しかった。
「はいってたか?」
 後藤さんは「いいえ」と答えたという。
「ほんと、か?」
「はい」
「うそ、ないな?」
「はい」
「おまえ、みたこと、いう」
「いいえ」
「わすれる?」
「はい」
 解放される予兆がでてきくると後藤さんは嬉し涙をこぼしたという。
「よし、わかた」
「か、帰っていいですか……」
 言い終わる前に髪の毛を掴まれ、強引に体を起こされるとみぞおちに蹴りを入れられた。
「まって、ま、まって、ちが」
 勢いをつけた膝が顔面を襲った。耳の近くでポキリと音が鳴った。鼻から大量の液体があふれ出て、口に入った。鉄臭さかった。
「ごべんんなはい」
 すっかりルールに縛り付けられていた後藤さんは、「他の言葉を口にしちゃったからしょうがないな」と反省すらしてしまったという。
 男が腕を振りかぶる気配があった。
 後藤さんは(死ぬことになるんだろうなぁ)と徐々に痛みが麻痺してきた頭でそう思った。
 ハンマーがぶつかったような衝撃。
 ようやく後藤さんは意識を手放すことができた。

 後藤さんは池袋西口公園に放置されていた。
 通行人に起こされ、救急車を呼ばれた。鏡を見ると、顔のあちこちで血が凝固していた。鼻は『く』の字に曲がり、前歯は犬歯までなくなっていた。後藤さんは再び失神した。
 警察には道端で知らない男に襲われたと後藤さんは説明したという。
 私が絶句していると後藤さんは付け加えた。
「けど私以上に悲惨な目にあっている人もたくさんいるわけで……。入れ歯で済んでラッキーでした」
 裏社会には拷問されて発狂されちゃう人もいるんでしょう? そう前向きに考えていると後藤さんは言った。
 李さんを含む、オフ会に賛同したフォロワーは全員アカウント削除されていた。謎は残るが追求するつもりは一切ないそうである。
 後藤さんは二度とソーシャル系のネットサービスを使わない。
 

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コメント
非公開コメント

つかさ
韓国や中国と聞いたら警戒しないとアカンやろ?

2013-11-28 23:22 │ from 名無しURL

チャンコロについていった罰だな
この世にまともなチャンコロが居るとでも思ってるのかw

2013-12-23 23:00 │ from 名無しURL

お…恐ろしい
チャイニーズマフィアですか?

2016-07-23 16:08 │ from 零URL

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