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ステンレスハンガー

恐怖体験談

 瀬尾さんは1983年夏生まれ。出身は新潟。
 一時期は子供向け映画監督を目指していたが今は中小企業のシステム管理に従事している。
「はしかみたいなもんですよ、撮れるわけがない」
 大好きな夏の終わりに異変は起こった。
「家で映画を見ていた時でした。その日は仕事でしち面倒なお客さんで雑巾のようにクタクタに疲れ果ててました。家に帰ったらビール、シャワーを浴びてまたビール、それからようやく一息ついて映画を見ていました。もちろんビール片手に」
 瀬尾さんはかなりのビール愛好家らしく、それは年齢の割に貫禄ある腹部からもわかる。
「部屋を真っ暗にして映画を見てたんですね。『僕らの七日間戦争』っていうずっと前の子供映画。宮沢りえが綺麗なんだなぁ。夏になると毎回見るんです。……もう音声だけでどのシーンかわかるので、酔いと音にうとうとしてました」
 もとから二時間まるまる見るつもりはなかったと瀬尾さんは言う。
「ぼうっとしていたら突然、窓がコツ、コツと叩かれたんですね。まぁ虫だろうと思って。近くに公園もあったし」
 今までもベランダにカナブンの死骸を見つけることはあった。
「だから放っておいたんです。けど……映画も中盤を過ぎたあたりでおかしいなって思って。もちろん窓の音は続いていました。一定のリズムでコツ、コツ……と。どうして俺の家なんだろうって。だって真っ暗なのに。そりゃ映画の明かりはありますけど……けれど一人暮らしする大半の人はカーテンなんて開けっぱなしにはしません。薄暗い部屋に虫は飛び込んでくるのかなって思いました」
 瀬尾さんの意識は徐々に覚醒していった。
「覗き見るようにカーテンを少し開けました。すると洗濯物を干すステンレスハンガーが窓にぶつかっていたんです」
 面倒だなと瀬尾さんは眉をひそめた。長年使用していたせいでステンレスは引っ掛け部分を中心に山のように曲がっていた。曲がって位置が下がった端が窓にぶつかっていた。
「とにかく鬱陶しいから下ろそうと思ったんです。窓を開けて物干し竿から引っ張りしました。けれど感触が柔らかくて、カーテンで隠れていた部分に目をやったら」
 目を血走らせた女がいた。
 坊主に近い短髪だったが白いタンクトップからは乳房が漏れていた。腋毛が尋常でない量で生えていた。
 数秒、瀬尾さんは女は見つめあってからハンガーから手を離し、窓を閉めた。
 胸は早鐘のように鳴っていた。
 ちょうど映画のクライマックスシーンが始まり、窓をノックする音は再開された。
 安いからと一階に住んだことを始めて後悔した。
「警察にはもちろん電話しました。けれど『窓を叩くだけ? 知らない女性が? 窓を?』と全く相手にしてもらえませんでした。その日は近くで大きな事件が起きたようで人手も少なかったそうで、パトロールしときます程度のふざけた対応でした」
 電話の最中も音は止まるどころか、さらにボリュームを大きくしていった。
「ああなっちゃうとダメですね、男なんて。もう逃げることしか考えられなく。バイクはあったんですけど酒飲んじゃってるし。仕方ないから財布と携帯だけ持って、慌てて外に飛び出しました。鍵なんて閉めてる余裕ありませんよ。ダッと駆ける時、ちらっとベランダを見ました。まだあの女は一心不乱にハンガーで窓をノックしてましたよ」
 翌朝戻ると、泥だらけの部屋からぼくらの七日間戦争のDVDだけがなくなっていた。
「やっぱあの、輝かしい子供時代って、誰しも惹きつけるんですね。あれが異常者だったのか霊だったのか、わかんないですけど」
 それ以来、瀬尾さんは映画を夜に見なくなったという。

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コメント
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ステンレスハンガー

私がそんな体験をしたのならば、たぶんだけど、一生涯、夜に映画等は見れなくなっているかもしれない。

2016-12-10 13:24 │ from 怪談・怖い話まとめアンテナURL

「クスリやってるぽい人がベランダに入り込んでる」と言ってお巡りさんを直接連れてきたらよかったのに。

2017-01-23 13:26 │ from 名無しURL

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