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The Sinister Stranger

 杉浦さんは中小企業で事務をされている。
 営業マンたちが出払うと職場に一人きりになることも稀ではなかった。
 予定もない来客が訪れたのは月末の昼間だった。
「なんだか会社のフロアの受付から、声がするなぁって思ったんです。『うぉおい』みたいな唸り声が。たぶん荒っぽい配達の人かな? って思って出てみれば」
 身長180センチを越す白人男性が立っていた。
「パッと見た時に、その外人が作業員みたいな……ええと電柱の工事している人の格好が近いです。だから、あっ何か工事のお知らせかなって思ったんです」
 だが白人男性は杉浦さんの姿を認めると一方的にまくしたてた。もちろん英語だった。
 話しぶりは何かお願いごとをしているのようだった。
「あの、なんでしょうか」
 よくわからないまま質問したが伝わる気配はない。
「聞き取れたのはリニューとかアーユーとか、それくらいです」
 会社に勤めて四年間、こんな経験は初めてだった。
 英語は得意ではない杉浦さんはパニックに陥ったそうだ。
「あぁいう時って頭の中が真っ白になるんですね。後から落ち着いて思い返すと、中学生レベルの英語なんですけど。もうその時は『わかんないわかんない』が先にきちゃって、ピーって停止しちゃうんです」
 口を出る言葉は「ワタシ、ワカリマセン、ゴヨーケンハ」と何の意味もない留学生が話す日本語のようなものばかり。
「イングリッシュ、ドントノウ」
 振り絞った言葉も無視されたのか伝わらなかったの、白人は喋り続けた。
 杉浦さんが途方に暮れていると、白人は呆れたように一枚の紙を差し出したという。
 そこには子供の描いた悪魔のようなイラストと一文[you become his pain]が書いてあった。

 全く意味がわからなかった。
 えーと、えーと……と、とりあえずで感動詞を呟く杉浦さんに白人は馬鹿にしたようなため息をついた
「あぁ映画みたいに本当にこんな態度とるんだぁって斬新でした。ただ斬新だったのは一瞬で……」
 流石に温厚な杉浦さんも「出て行ってください!」と声を荒げたという。
 せめて片言でもいいから日本語で説明しすべきだ。それが礼儀というものではないのか。
 相手は気圧されたのか、しかし不機嫌そうな表情を浮かべたまま去っていったそうだ。
 なぜか罪悪感が込み上げ、その日は仕事にならなかった。

 翌週、杉浦さんのお父様は亡くなられた。交通事故だった。よそ見運転をしていたのか速度八十キロでガードレールに突っ込み、即死だった。
「根拠がないって言われればそれまでなんですけど……あの男が原因だった気がするんです。予言だったのか、それともあの男の呪いだったのか……もう一度会ったら? いいえもう二度と会いたくありません。また災厄を運んでくるかと思うと、物凄く困るんです」
 今でも会社に一人きりになると、杉浦さんは外からの声に怯えるという。


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