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クラッシャー上司

 柿沼さんが以前勤めていた工場での上司は人格破綻者だった。
 怒鳴り、長々と嫌味を言い、育ちを否定する。
 教えてもいない仕事を命令し、できないと大勢の前で罵った。
 褒めることは一切しない。休日であろうと構わず呼び出す。「自分は頭が悪くて両親がまともに育ててくれませんでした」そう言え命令し、嗤う。
 だが少しでも偉い人間がいる前では決してそんな素振りは見せない。計算づくなのだ。
 精神を病んだ柿沼さんは一年と二ヶ月で辞職したそうだ。

 実家に戻った柿沼さんは長い間ぼうっとしていた。
 ある日試しに元上司の名前を検索してみた。
 登録しているSNSでも見つけてやれ。どんなことを書いているのか覗き見てやろう、そんな気持ちだった。 
 元上司の名前を、とある掲示板で見つけた。
『書かれた名前の人間が酷い死に方をするスレ』とあった。憎い相手を呪うための場所だった。
 名前が書かれた日付は二ヶ月前だった。
 柿沼さんは推測した。
(たぶん、あの男は俺が辞めてからも人を傷つけ、心を痛めつけてきたのだろう)
 今となっては「死ね」とはまで思わないが、腕を失うとか足を失うとかなにかしらの大怪我をしていて欲しかった。
(はたして効果はあったのだろうか)
 自分でも馬鹿げていると思ったが柿沼さんは以前の会社名で検索をかけてみた。
 冗談半分だがあの男が職場で事故を起こしていることを心の底で望んでいた。
 ニュースは見つかった。
<△日午後×時頃、○○工場にて二十代男性が破砕機に巻き込まれ死亡。>
 柿沼さんは首を捻った。元上司は四十は超えていたはずだった。
 仲の良かった同僚に連絡をとり、さりげなくそのことを尋ねてみた。
「あぁあいつのことか……」
 ため息まじりで教えてくれた。
「ほら、お前の上司だった奴いただろ? あいつの下でやってたんだけど、だいぶメンタルやられてたみたいだぜ。不眠症やってたみたいだから、寝不足でふらふらしてるとこ事故ったんじゃないかってみんな話てる」
 唖然とした。
 元上司は元気にコソコソと怒鳴りちらしているという。

「おそらくだけど、あの呪いのスレッドに書き込んだのって事故死した奴だと思うんだよ。なぁ、どう思う?」
 私は重く苦々しい気分で頷いた。
「俺は呪いって100%は信じていないよ。だけど人を呪わば穴二つっていうだろ。死んだ奴が先なだけで、あの男もそのうち死ぬかもしれない。その死に際が惨めで強烈なものになるように、俺も掲示板にあの男の名前を書いてやった。それで俺も事故に巻き込まれたって構わない」
 積み重なった呪いは形となるのか。それともただネットというリソースの無駄遣いとなるのか。まだわからない。
 柿沼さんが元上司の名前を書く頻度は毎月増えていっているという。


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コメント
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そんなに人から憎まれる人っているんだね。溜まりに溜まった憎しみはどれくらいの激しさでその上司に降りかかるんだろう。

2015-09-29 08:33 │ from 名無しURL

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