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病い重い想い

 桐絵さんはかつて女子高生だった頃、人生で最高の片思いをしたという。
 文字通り、胸が張り裂けそうな思いだった。
 何かに取り憑かれたかのように夜な夜な彼の名前を呟いた。
 顔が見れなければ涙がこぼれ、声が聞けなければ叫びだしそうになる。
 学校は楽園であり地獄でもあった。
 彼が他の女子と話している場面を見ると、身体が切り裂かれるんじゃないかと錯覚するくらい苦しかった。
 あまりに強すぎる思いゆえ、相手に伝えることを考えただけで倒れそうになる。
「どうすればいいのか、わからなかったの。連日胸の炎に燃やされる感じっていうか……」
 彼女は毎日、相手の男の子から遊びにいこうと誘われることを祈った。告白されることを祈った。
 彼の自宅まで出向き、偶然をよそおって出会いないかと行動したこともあった。 
 そして公園で二人、夜遅くまで語り合えればと願った。
 もちろんそんな都合のいいことは起こらない。学校でも週に一回話せればいい方だった。

 結局、桐絵さんは従姉妹のお姉さんに教えてもらった方法をとったという。 
 たぶん従姉妹は冗談まじりというか、本気ではなかったと思う。あるいはどこかで聞きかじった知識を披露しただけだったのかもしれない。
 だが恋する乙女にある種の冗談は決して言ってはならない。病人に治療法を提示すれば、藁にもすがる思いで手を伸ばす。そして手に掴まれたものはえてして紛いものか禍々しいものだ。
 桐絵さんは深夜家を抜け出し、近所の市営墓から土を盗んだ。
 蜘蛛は小さいものを3匹捕まえてペットボトルに入れてある。
 髪の毛と剥がした指の皮を燃やしたものは机の中。
 桐絵さんは上記三点を練った。机の上に新聞紙を引き、混ぜ合わせ、練りあげ、形を整え、まるまる太った泥人形をつくりあげた。
 まるでニスを塗ったかのような出来だったという。
 泥人形は彼の自宅の地面に埋められた。深夜二時、静かに土を掘る音が響く。

 それで、どうなったのか。おそるおそる聞く私に彼女は言った。
「彼はどんどん太っていったの」
 成長期とはいえ、肉のつき方は冬眠前の熊のように急速だった。
 誰しもが病気を疑ったが異常はないという。
 その年の一学期が終るころには別人のようになっていた。
「それでも好きだったの。体型なんてどうでもいいって思ってたし、その分ライバルが減ってラッキーだなって」
 だが受験も本格化し、高校を卒業し、別々の大学に行く頃になると桐絵さんも次第に落ち着いていった。
「不思議なものよね」
 あれほど昂ぶっていた感情も時間とともに、夜明けの湖面のように静まっていったという。
「あの一時の気持ちはなんだったんだろなぁって今でも思うの。夢を見ていたみたい。あれからあんな激しい気持ちになったことは一度もないもの」
 来春の五月、桐絵さんは会社の同僚との結婚式が控えている。熱情はないが「結婚相手として条件は抜群にいい」という。


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コメント
非公開コメント

どうにも胸くそ悪い話ですね。
因果応報…になるとは思いますがね。

2014-08-05 13:33 │ from みそぎURL

恋する乙女はって言うと聞こえは良いけど…やったことは凄い身勝手だよね。

2015-09-29 08:30 │ from 名無しURL

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