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出張先の辺鄙な町で

 飲み仲間である寺本から聞いた話。

 彼が出張で訪れた土地は、よくあることではあるそうだが、ど田舎だった。駅周辺には何もない。東京では駅前に交番のごとくある富士そばも松屋もなかった。
 定食屋らしきものはあるが、ふらりと一見が入れるような佇まいではない。
「ほらああいうとこの住民はさ、車でイオンまでお出かけするから。だから駅前なんて悲惨なもんだよ」
 仕事を終えた寺本は空腹を感じていた。久しぶりに緊張した商談でもあったので、軽く酒も飲みたかった。
 ビジネスホテルから出て駅前を徘徊するが、目的にあった店は見当たらない。コンビニはあったが、ホテルで一人、つまらないテレビを眺めながらの晩酌も味気がない。
 ホテルから十分歩き、ようやくラーメン屋を見つけた。餃子で一杯。チャーシューでもう一杯。から揚げでもあれば儲けもの。
 頭の中で勘定をしながら暖簾をくぐった。
「今時まぁよくやるね……ってくらい、昔ながらのラーメン屋だったよ。つけ麺? 油そば? そんなもん喰ったこともないって風貌のおっさんがやってたよ。ガキの時あったろ? 黄ばんだメニューを開店以来変えてませんよってとこ」
 洒落た居酒屋チェーン店よりは全然いい。
 いらっしゃい。
 予想と違わず無愛想な声をあげた店主はちらりと顔をあげた。
 店内には誰もいなかった。いつも通り寺本は端の席に座ることにした。特に理由はないが端に座るのが習慣なのだという。カウンターに置かれていた水の入ったコップは邪魔だったので横にどかした。片付けるのが億劫だったのだろうと寺本は断りも入れなかった。 
 なにかいいたげな表情を浮かべた店主だったが、寺本は気にせずビールを注文したそうだ。
「味は別に……って感じだよ。まずくはないけど旨くもない。たださんざん探してたから嬉しくて」
 つい自分の食べられる範囲外まで注文してしまったという。
 餃子・メンマ盛り合わせ・冷奴・角煮と肉野菜炒めにつまみチャーシュー。
 つまみにあわせてビールをぐいぐい飲んでいると次第に酔い始めた。目の前の皿はなかなか減らない。しめにはラーメンも食べたいと寺本は欲張っていた。
 トイレから戻ってくると、隣の席には新しい客だろう、二十歳そこそこに見える青年が座っていた。
 普段なら気持ち悪いと警戒するのだが、酔いもあるうえ人恋しいタイミングだ。
 青年の手元にはビールしかなかったことを幸いに、寺本は自分のつまみを勧めたそうだ。
 最初は固辞していた青年だったが、寺本の押しの強さもあり、最終的には二人でつつくという形になったという。
 青年は地元の人間であり、まだ学生だと言った。
「それがどうも話ししててさ、全然幼いんだよ。あれ二十歳なのにこんなもん? って感じで。まー昔に比べたら今の若者はガキっぽいからなぁって一人で納得してたけど」
 酔った人間の代表的な悪癖であるが、寺本は人生訓を青年に語りだした。
 社会とは。働くとは。例え辛くとも生きていかねばならない、とか。
 何を話しても、「へーすごいなぁ」と感心しきりの青年に気をよくした寺本は、私からすれば噴飯ものなのだが、女性にまつわる話すらしだしたという。人様に語れるほど経験がないくせに、と私は呆れた。
「まぁ、お酒も入るとさぁ、つい大きくね、見せたくなるじゃない」
 寺本は酔いに任せ、今まで何人の女と寝たかと話したという。やや人数も経験も盛って話したという。
「その顔で? スポンジボブみたいなツラしてるのに?」
「そんな口の悪いこと言うなよ……」
 相手のリアクションは、先ほどに輪を掛けて驚き感心したものだったので「こいつ童貞か」と寺本は思ったそうだ。
 そこで寺本は、彼の為を思い(ただ酔っ払っていただけだと確信するが)持ちうる限りの性技を伝授したという。
 舌と指二本を使った技術を教える頃にはお銚子にまで手を出していた。効果的な腰の回転方法を実演する頃には銚子が二本空になっていた。後から考えれば不思議なことだが店主からの注意はなかった。普通出ていけと怒鳴られそうではあるが。
 青年はその間ずっと感心しきりだったそうだ。

 結局二時間はいただろうか。
 閉店を知らされた寺本は青年の分も勘定をもった。
 だがあまりに話しに熱中するあまり、ラーメンを食べることを忘れてしまっていた。
 寺本がそう言うと、青年は「近くにラーメンの屋台がある」と教えてくれた。一緒に食べてもいいとさえ言ってくれたそうだ。
「あーすげぇ仲良くなれたなぁって嬉しかったよ。旅はいいね! って」
 
 屋台はすぐ近くにあった。
 さっきまでなかったのにと寺本が言うと、深夜営業なんです、と青年は説明したという。
 あっさりしたラーメンを食べ終わると、なんとなく別れが惜しくなった。
 寺本はせっかくなので、記念にと青年とスマートフォンにて写真を撮ることにしたそうだ。
 青年と別れ、寺本は昼間で爆睡をした。 

 東京に戻ってからも写真のことはしばらく忘れていた。
 ふとデータ整理をしている時に見返していると、その時の写真があった。
 瞬間、寺本は愕然とし、何度も何度も見返した。
 青年はいなかった。
 隣には代わりに、頭部の欠けた地蔵。
赤ら顔の寺本は地蔵に寄り添いながらビースをしていたという。

 後日談だが、寺本は先月も同じ土地に出張になった。
 あれは何だったのか、確かめたくてもう一度ラーメン屋に出向いたが、閉店していたそうだ。
 夢だったのか、携帯のカメラになにか人知を超えた不具合が起きたのか、それは今でもわからない。 
 
 ラーメン屋でカウンターの端に座ったときのことをもっと聞かせて欲しい、と私は言った。置かれていたコップは本当に片付け忘れていたものだったのか。その席は綺麗に拭かれてはいなかったか。店に似合わない仏花は飾られていなかったか。
「覚えてねぇよ。そんなことよりさぁ、お地蔵さんにセックス自慢しちゃったよ……。馬鹿か俺は。ほんと馬鹿、馬鹿」
 なにか不幸なことが起こるのではと寺本は心配しているが、現在は無事のようだ。


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コメント
非公開コメント

感心してアホ話聞いてくれるお地蔵さん可愛いww

2014-11-04 03:20 │ from 名無しURL

多分

ピース。を
ビース
て誤字しちゃった管理人さんも可愛い

2017-02-08 14:24 │ from ぷにえURL Edit

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