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歯磨き中

 阿倍さんが就寝前、半ば目を閉じながら鏡の前で歯を磨いていた。
 ベッドに身体をうずめていたのだが、歯磨きをするために無理やり起きたのだ。
 洗面所にだけ電気をつけた状態だ。終ればすぐ夢の中。
 口内に溜まった歯磨き粉を吐き出そうと屈む。
「ペッ」
 身体を起こすと、鏡にもう一人いた。
 身長は2メートルほどで真っ白なコートから顔だけ見える。
 アブラゼミのような顔だった。
 茶色いガラス玉のような目玉が顔の横についている。口だかなんだかよくわからないパーツが、枯葉のようにパリパリとした頬が、ぼろぼろと床に零れ落ちていくのを、阿倍さんは鏡越しに眺めていたという。
 その間、大きな半透明の目玉も阿倍さんをじぃっと見つめていた。
 口に再び溜まった歯磨き粉は吐き出せず、ついに飲んでしまったという。 
 緊張に耐え切れなくなった阿倍さんは叫びながらしゃがんだ。悲鳴を上げ続けた。五分ほどそうしていただろうか、落ち着いた阿倍さんは「絶対気のせい! 絶対に気のせい!」自分に言い聞かせて目を開ける。
 何もいなかった。
「あっははっ! バッカみたーい」
 誰に聞かせるわけでもない空笑いをした後、何度も何度もうがいをし洗面所を出た。
 暗い1Rの部屋。自分のベッドに、大きなふくらみが見える。
 阿倍さんはパジャマの格好で外へ飛び出していったそうだ。

「それ以来ね、私は洗面所に入るとき、財布と携帯を常備するようにしているの。パジャマで朝まで徘徊するのって、本当に絶望的な気分なんだから」


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