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寂しがりや

 村枝さんは今年会社勤め十四年の敏腕営業マンだ。
 同僚が呑んだ帰りに交通事故にあったのが二年前。
「即死だった。同期にしたら珍しくいい奴だった」
 村枝さんは言葉数少なく語ってくれた。
「忙しい。けど墓参りを欠かすことは人として駄目だから」
 その日も夕方から仕事の打ち合わせがあった。一ヶ月振りの休日であるが先方がどうしてもこの日でないと駄目だという。
 夜からは別の取引先と食事をする予定となっている。イケ好かない相手だったが今後スムーズに仕事が進むのであれば仕方がない。
 午前中、一人で霊園に訪れた。
 割高だったが霊園のすぐ脇にある墓石屋で線香と菊の花束を購入する。

 以前の同僚が眠る霊園はそう大きくはない。
 小学校のグラウンドレベルだという。
 去年の記憶をたよりに村枝さんは墓地を歩いた。
 しかし年のせいで記憶に抜け落ちている部分があるのか、見つからない。
 四つほど区画された墓地を中央で見渡す。
 だが当然ではあるが墓石は似ている。
「だから……迷った」
 同じ通りをなんども歩く。
 一つ一つ墓石に刻まれた俗名を確認して歩く。
 目印であった木の周りを探したがどこにもない。
「彼の御実家に電話されなかったのですか、きっと教えてくれるでしょう」
 私の言葉に村枝さんは目を伏せた。
「電話、あまりしたくなかった。なんて言っていいか、わからないんだ。今でも」
 小一時間で切り上げる予定でスケージュルを組んでいた故、焦るばかりだったという。
(あいつ、空気読んでくれよ……)
 思わず意味のない愚痴が口から漏れる。
 小走りで駆け巡るが、まるで樹海に迷い込んだようにグルグル同じ場所をめぐっているようだった。
 次の予定まであと三十分に迫っていた。
 タクシーを使えば間に合う距離だった。
 逡巡したすえ、村枝さんは出口に向かった。
 長い息を吐く。
「思い返せばアイツはいつも呑むとき、終電をオーバーさせるほど延々と飲み会を続けていたよ。寂しがりやだったんだろうな、アイツ」
 村枝さんの言葉には、ぽっと火を灯したような暖かさがあった。
「仕方ないんだ。友達だから」
 そして村枝さんはいったん霊園だから出たそうだ。
 電話で取引先に連絡し、その日の全ての予定をキャンセルした。そして駅まで戻りコップ酒をしこたま買い込み、霊園に戻った。亡くなった同僚が好きだった銘柄だ。
 不思議なことに同僚の墓前は三分もかからないうちに見つかったという。
 カップ酒を二つあけ、墓前にそえてから村枝さんは酒を呷った。
 暗くなるまでそうしていたそうだ。
「全て錯覚で済んじゃうような話だけど……、墓前で飲んでるときは、まるで人の家にいるみたいな居心地の良さだったよ」
 錯覚かもしれないからな。最後まで村枝さんは付け加えたが、その目は体験が真実であると物語っていた。


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コメント
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いいお話ですね。
素敵な友情に泣けました(T-T)

2017-03-13 12:24 │ from 零URL

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