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花魁渕(その3)

 飛田さんが学生時代、地元の友人たちと花魁渕に行ったときの話だ。
 誰も心霊の類は信じていないが、暇つぶしがてらの肝試し。
 ただ誰も目的地の正確な場所を把握していなかったため、道中は「やばいグダグダ」だったそうだ。
 
 休憩がてら一旦車を止めると、各々が車外に出る。飛田さんも煙草を吸いに外に出た。
 誰ともなく、そろそろ帰るべと言い出す。確かに潮時だった。
 車に戻ると一人がいない。
「あいつまだ小便してんのかよ」
 車から少し離れた先に、こちらに背を向けて用を足す友人の姿が見えた。
「おい、車出しちまおうぜ」
「いいね」 
 男連中に度々見受けられる、きついジョークの一種だ。
 時刻は十二時をまわっている。あたりに明かりは少ない。しばらく放置してビビらせてやろう、そんな悪ふざけで飛田さんは車を発進させた。
 背後から悲鳴とも怒号ともつかない声が聞こえた。
 十分ほど走っだろうか、さぞ怒ってるだろうなぁと笑いながら戻ったそうだ。
「あいつ、何やってんだ……」
 
 ヘッドライトに照らされた友人は、道路に四つん這いになっていた。
 慌てて車から降りて近づくと、友人はワンワンと犬のように吼え、飛田さんたちにむけ威嚇するように唸ったという。
「最初はもちろんふざけてるんだろって思ったよ。けど顔つきがさぁ……普段と全然違うんだよ。ほら、グリコ森永事件のさぁ犯人の顔あるじゃん、まさにあんな感じの目つきなってて」
 誰も口に出さないが、みな背筋に冷たいものが走った。
「とりあえず車に押し込んで、急いで帰ろうって話になって」
 だが車に乗せてからも友人は正気に戻らない。頬を叩いても怒鳴っても、彼は目を尖らせたまま犬のように吼え、後部座席で暴れて続けたという。

 そんな車内の様子は外から見てもおかしかったのだろう、暫く走った所で巡回中のパトカーに停められ職務質問を受けたそうだ。
 後部座席の友人を見た警官は真っ先にドラッグの類を疑った。
「もう俺ら焦っちゃって、一から全部正直に話したんだよ。そしたら」
 今年入って、お前らで三人目。
 と警官は呆れたように解放してくれたという。 

「仲間は次の日には元に戻って、ケロッとしてたよ。立小便していたあたりから何にも覚えていないんだって」
 たぶん、と飛田さんは言う。 
「あそこにはさぁ、花魁以外の何かもあるんじゃねぇのかなぁ」


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