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便所の落書き

 恭一さんが不動産屋さんから聞いた話。
 物件を探していた恭一さんが内見時、気まずい沈黙を回避しようと担当する若手営業マンへあれこれ質問を繰りだしていた時だった。
「事故物件ってやっぱり安いんですか?」
 童顔の不動産屋は答えた。
「事故物件ですか。もちろんありますよ。うちは多くはないですが。うちは少ないですよ。ま、家賃は安いですねぇ。ただ自分なら借りないけどなぁ。僕らはほら、職業柄行ったりしますが、まぁ思い込みなんでしょうがどうも寒気がするんですよ。なーんか薄暗いですし、見られているような錯覚しますし」
 大変ですねぇ。
 そう相槌をうつ恭一さんに、彼は営業マンらしい笑みを浮かべ、首を振った。
「本当に怖いのはお化けじゃありませんよ」
 恨みを買った女の家です、彼は言った。
 買っちゃうと、書かれるんです。
「ネットのすごく……なんていうんだろ、ゲスな掲示板って星の数ほどあるじゃないですか」
 あぁいうところに住所とか名前書かれちゃうんです。
「え、2chですか? いや2chの方がまだ知性を感じられるようなゲス極まりない掲示板ですよ。別に特定の掲示板って訳でもないですが。ユーザーがゲスしかいない掲示板って永遠に尽きないじゃないですか。消えては増えてって繰り返し」
 恭一さんは話の展開に好奇心を覚えながら頷いた。
「ネットに書かれた住所と部屋番号って、面倒な手続きしなくちゃ消えないですよね」
「そうみたいですね。プロバイダに連絡したり、最悪裁判だったりって聞きます」
「皆が皆、そんなことしないじゃないですか。だからその部屋は、ずっとネットのゲスたちから監視されているんです。『あのアパートの●●号室の女はヤれる』とか『飽きたからココの女は自由便器。××の凸アパート203』って悪意もって書き込みされた文章を見られるんです。書き込みされた当人は引越ししているにもかかわらず」
 そこに、女の子が、引っ越しちゃうと最悪ですね。
 彼は財布を落としたかのような顔をする。
 恭一さんは尋ねた。
「何かトラブルが、悪戯が起こるってことですか?」
「……僕らも、なるだけネットから見つけるようにしているんですけどね。隠語を交えているから、普通に住所そのままで検索しても引っかからないんです」
 そして日本中、いや世界中の掲示板を一つ一つ確認していく作業が、通常業務もある人間の作業量でこなせるわけがない。
 話を逸らされた、と感じた恭一さんは無礼を承知で再度尋ねた。
「悪戯が起きるのですね?」
「まぁ、悪戯で済めばいいのですけどね。悪戯だったら。僕が聞いた話だと住人の娘が深夜目を覚ますと、ベッドの横で裁ちバサミを振り回す男がいたそうです。ただ不幸中の幸いで、その娘は怪我をしましたけど死にませんでした。犯人は捕まりましたけどね。そして死ななかったから……僕らにも告知義務が発生しません」
 息を呑む恭一さんに、若い不動産屋は「貴方が男性だから言ったんですよ。男なら悪戯されませんから」と笑った。
 そして一転、心の底から望むような真剣さで、
「担当物件で事故が起きないよう、祈るばかりです」
 と言ったという。

 内見を終えた恭一さんは、結局引越しをしなかったそうだ。


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コメント
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ここまでに載った全話を通読してみましたが、このサイトに載ってる話、怖い話と言うより、ほとんどは「事実だったら嫌な話」「生理的に嫌悪感を抱く話」のような気が。
「怖い!」よりは「うへぇ…」とか「何だよそれ…」が先にたつことが多かったです。まあ、嫌悪感と恐怖はよく似た感情だ、というのも確かですが。

2015-04-08 12:25 │ from しきURL

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