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Bluetooth対応スピーカー

 同僚から、陣野さんは引越し祝いにBluetooth対応スピーカーを貰った。
 電波を使うことによりキッチンやバスルームなど離れた場所でも、スマートフォンで再生する音楽が流れるとのことだった。ワイヤレスで、設定も簡単である。
 防水型のものだったのでシャワーに濡らしてしまう心配もない。
「新しいアパートは広いお風呂だったから、すっごい楽しみにして帰ったの」
 お風呂掃除もそこそこに陣野さんは早速お湯を溜めた。
 ペットボトルのお茶。濡れても構わない雑誌。そしてお気に入りの音楽。
 彼女はスピッツを流しながら、長時間湯船に浸かろうと決めた。
 チェリー、楓、青い車。
 入浴剤はLUSHで買ったハチミツをたっぷり含んだもの。
 陣野さんは手短に髪と身体を洗うと、浴槽に身を滑り込ませた。
 再生ボタンを押す。
 極楽気分だった。
(このままだったら、一時間も二時間も、お風呂に浸かっていられそう)
 草野マサムネの歌声が浴室を満たす。
「だけど……」
 十分もすると音楽が、携帯の電波が良くないのか断線気味になったと。
『青い車』のサビも途中だった。再開を待っていた。一度お風呂を出て、携帯の電波を確認すればいいのだがお風呂から出て身体を拭くことを考えると面倒だった。
 音が変わった。
 女性の甲高い、ソプラノよりもさらに高い歌声だった
 子供のときに連れていかれた教会で耳にした聖歌のように透明感がある歌声だった。
(なんだろ、この曲)
(こんな曲スマートフォンに入れてない)
(どこに繋がったの?)
 不思議に思いながら陣野さんは聴き続けた。
<カ…………、カ……リ>
<カスィ……カスィ、カスゥイリィィィ>
 声は擬音語のようなフレーズを延々と繰り返す。
(あ、隣室の人が流してる音楽を拾っちゃったのかな?)
 そのまま流していると、次第にノイジーな歌も悪くないように思えた。どこか心が落ち着いた。
(何ていう歌手で、何ていう曲なんだろう?)
 好奇心にまかせ都合五分ほど聴いていただろうか、音楽はぷつっと途切れた。すぐに再開された音に、陣野さんは固まった。
 今度は『隣室の人が流してる音楽』なんて言い訳はできなかった。
 
 高いところから飛び降りる音だった。
 数回。空気を縦に切り裂く音。落下音。
 落下音に紛れ、小さい咆哮も聞こえた。
 あぁぁああぁいやだぁぁあああ……――。
 コンクリートへの衝撃音。熟れた果実が潰れる音。

 陣野さんの部屋は二階建てアパートの二階にある。何かが落下してもこんな音にはならない。
 こんな趣味の悪い音を、隣人が自室で再生しているとも思えない。
 心臓が重く跳ねる。
 そして陣野さんの脳裏の、恐怖を司る神経が告げる。
<スピーカーは、どこに繋がってしまったんだろう?>
 彼女はすっとスピーカーの電源を落とし、以降二度とスイッチを入れることはなかった。

「よくよく思い返すと、最初に流れてた歌って」
 カシリ、カシリって歌っていたの。
 陣野さんが「カシリ」という単語に「呪詛」という意味があると知ったのはつい最近のことだったという。

 スピーカーをプレゼントしてくれた同僚は、事故が原因で下半身を痛め(どの部位であるかはついぞ聞けなかった)それが原因で仕事を辞め、郷里に戻っていったそうだ。
コメント
非公開コメント

キョ、キョワイ〜ッ‼︎´д` ;

2015-07-03 18:57 │ from 名無しURL

平山さんの後釜狙えますよ どうにか打診出来ませんかね

2015-07-09 14:18 │ from 名無しURL

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