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紅い花

 紗恵さんは五年前に交際相手を病気で失っている。
 長い時間を経て、紗恵さんはようやく好きな人が出来た。
 彼との初めてのデートの帰り道、紗恵さんは空に浮かぶ奇妙なものを見た。
 
 紅い花だった。虫の群れのように、拳大の、名も判らぬ紅い花が無数に飛んでいた。
(風に飛ばされたのかな)
 その花の群れは伸びたり縮んだりしながら、時間をかけ紗恵さんの頭上を舞った。
 肩が濡れた。
 雨、と紗恵さんが気づく頃にはぐっしょりと濡れていた。見上げると雲はない。快晴の中、紗恵さんを中心とする半径一メートルだけが濡れていた。
 唇にかかった水滴を舐めた。
 この間、紗恵さんの脳裏にめぐっていたことがあった。
「どうしても死んだ彼のことで。抑えてた、その、罪悪感みたいなものが、ぐぅっと湧き出てきちゃって。あぁやっぱり私が好きな人できたから、怒ってるのかな。寂しくなっちゃったのかな、あの人」
 だからこんな異変が起きるのだろう、紗恵さんはそう思ったという。
 私はこの先恋愛は無理なのかなぁって思ってたんですけど――。
 ふと違和感を感じ、水滴をもう一度舐めた。そして気づいた。

 あ、違う。あの人、きっとほっとしているんだ。

「甘かったんです。水滴が。蜜みたいに。だからこれは怒ってるんじゃないって思って。きっとずっと心配していて、私に好きな人が出来たことを喜んでくれたんだって気づけたんです」
 優しいんです、優しかったんです、あの人。目頭を押さえながら紗恵さんはそう言った。

 今でも三ヶ月に一度、彼のお墓参りは続けているという。
「結局その時デートした男性とは駄目になっちゃったけど、また好きな人が見つけられると思うんです。彼がついていてくれてるから」
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