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習字の先生

 千葉にお住まいの青柳さんは親の勧めもあり、二人の子供を習字教室に通わせている。

 母親の知人が経営している習字教室はそのエリアでは大きく、しかも格安だった。
 早速その週から通わせたそうだ。
 子供たちに「どんな先生?」と聞くと、いつも微笑んでいるメガネのお婆ちゃん先生とのことだった。
「何でもニコニコお話聞いてくれるの。部活で遅刻したときもそれは大変ねぇって怒らないし。すっごくいい先生だよ」
 と中学生の長男が答えた。
 だが次男はもの言いたげな目をした。
「この間見かけたよ。横断歩道で、ぼくのこと渡らせてくれた車がいたから運転してる人見たら、お婆ちゃん先生だった」
 ただ――そのことを次回の教室で告げると、先生はキョトンとした表情を浮かべたという。
「私じゃないわって言われたの。けどすっごく似てて。白髪頭も洋服も似てて。ウソついている風には見えなかったけど」
 へぇ、まぁ似てる人は三人いるって言うからねぇと青柳さんが答えた。
 長男は「お前が見間違えただけじゃねぇの」と言った。
 その二日後、習字教室から帰宅した長男は「お母さんの言うとおり、似てる人っているんだね」と言い出した。
 理由を聞くと、長男も次男と全く同じ体験をしたという。
「横断歩道で見かけたんだ。僕もお婆ちゃん先生にしか見えなかった」
 そんなこともあるんだと青柳さんは聞き流した。現象自体は珍しいものではない。子供の目から見れば大人は同じように見えるものだと青柳さんはわかっていた。

 教室に通いだして一ヶ月ほど後、夜のランニングから戻ってきた長男の顔は青ざめていた。
「どうしたの?」
 青柳さんがシャワーを浴びた長男に尋ねると、長男は泣き出しそうな表情でぽつりぽつり話し始めた。
「お母さん、前に『似た人は三人いる』って言ってたけど、あれ本当? 僕、さっきお婆ちゃん先生見た。あれは絶対にお婆ちゃん先生だった」
 青柳さんは噴出した。
「どうしたの真剣な顔しちゃって。走っててお婆ちゃん先生見かけたの? そりゃあ夜遅いけど外にいたっておかしくないじゃない。きちんとご挨拶はした?」
 できなかった、と長男は答えた。 
 彼はいつも通り、町内をぐるりと走っていた。図書館前の広場前を通りかかったとき、ベンチに腰掛けている老婆を見かけたという。
 街灯に照らされた老婆は、近づくとお婆ちゃん先生だった。
(こんな時間に何をしているんだろう?)
 様子が変だった。
 膝の上に雑誌を開いていたが、視線は地面だった。
「先生どうしたの? 気持ち悪いの?」
 横から覗き込んだ。ただ老婆は目もくれない。口元と鼻を歪めていた。視線の先に憎むべきものがいるかのような表情だった。
 彼は背筋にぞっとするものを感じ、それ以上話しかけられず逃げ出したという。
 青柳さんは話を聞いて困った。
「それはほら、きっと近所の認知症のお婆ちゃんじゃないかな」
 長男は首を振った。
「だって僕見たよ。お婆ちゃん先生だよ絶対。メガネのメーカーも一緒だったんだよ?」

 その後知ったことだが、お婆ちゃん先生の年齢は三十代だった。
 結婚は一度していたらしいが、どんな人生を送ってきたかまでは知らないと知人は言っていたそうだ。
コメント
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30代のオバサマにみんなしてオバアチャン呼びはさすがに失礼だと思います(´-`)そりゃいじけて夜中の公園で俯いちゃいますよ^_−☆

2015-09-13 22:59 │ from 名無しURL

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