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電車での迷惑行為

 終電間際、竹下さんは新宿駅ホームで電車を待っていた。
 くたくたに疲れていた。
 いつものように雑巾のように扱われ、昨日と同じように惨めな思いを味わった。
 重い身体で山の手線に乗り込もうとする、女に突然割り込まれた。
 自然と舌打ちが出る。
 そのまま押し寄せる人の流れで、竹下さんは女の後ろに立ってしまった。

「ほら、中途半端な立ち位置に立つ女っているだろ。お前がそこにいると他の人が奥に行けねえよって場所に。動線にぽけっと突っ立って、てめぇが原因のくせして、ちょっとぶつかられると睨む奴って本当迷惑だよな」
 車内の微妙な位置で、そこで女性はゆらゆら頭を揺らしていた。周囲の人に無関心だと見て取れた。
 女性のあまり清潔ではなさそうな長い髪が竹下のスーツに何度もあたる。
 不快感を隠せなかった
 竹下は視線を尖らせ女を見た。
 ストライプのシャツに綿のズボン。地味という言葉を体現したかのような姿は、終電間際の電車ではかえって浮いていた。
「なんか宗教やってる人に見えたわ」
 苛立ちを抑え切れなかった竹下さんは電車の揺れにあわせてバッグを女に押し当てた。強めに押し当てた。
 女から横目で睨まれたことを竹下さん察した。
(なんだ、文句あるのか、お前がそこに突っ立っているからだ、文句あるのか)
 女はいっそう好き勝手な動きを強めた。
 竹下さんの視界にスマートフォンが映る。自分のものではない。女が手にしたスマートフォンをちらちら見せてきた。
 なにかを歌うように口ずさんでいた。
 さりげなさを装った、だがあきらにこちらの視線を意識していた。
 スマートフォンの画面には模様が映し出されていた。幾本もの直線と鋭い三角形が、中央の五つの円形に集まっていた。
 つい二度見したという。
 なんだァ……? 不審に思うと同時に足ががくがくと震えた、喉元から吐き気が催した。すべてが突然だった。
 立っていられないほどに足が痙攣する。
 竹下さんはつり輪に必死に捕まった。初めて酒に潰れたときのような酩酊感だったという。

 高田馬場で女が降りると、嘘のように痙攣はぱっと収まった。
 後日、ふとスマートフォンに映し出されていた模様を書き記そうとしたとき、竹下さんの背筋に冷たいものが走った。角度によっては無数の槍が突き刺さった人形のようにも見えたという。
「あれは何だったのかね。呪いの一種なのかな。どんな意味を持ったものなか俺にはわからないけどさ……ほんと電車にはどんな奴が乗ってるかわかんねーから気をつけるこったよ。君もね、すぐに喧嘩しないで、スルーすべきだよ、どんなトラブルに巻き込まれるかわからないんだから」

 新宿駅から駒込駅に着くまでの出来事だったという。


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