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日本酒コレクター

 吉見さんははまだ三十歳にもなっていないが日本酒には目がない。
 新潟の銘酒を飲んだときの感動からのめり込んだという。
 洋酒コレクターのように、お金を貯めてはちまちま銘酒を蒐集していたという。
 コレクションしたところで、本人以外は理解できない、その一点では私と通じるところがあった。
 吉見さんは久保田の萬寿、獺祭の純米大吟醸。菊姫・菊理媛に十四代の龍泉まで集めた。
 何かめでたいことがある時に開けようと思っていた。
 ある日吉見さんが家に帰り、普段飲む用の、ソコソコに安い一升瓶を取り上げた。
 注ぎ口をつかむと、ぬるっとした感触があったという。
 大量の唾液が、べっとりと付着していた。
 他の一升瓶は小さく開けられ、茶色いものが付着していた。便の匂いがしたという。
 警察を呼んだがカードや金銭の盗難がなかったせいか、あまり真剣な態度は見られなかった。
「全部捨てるハメになりましたよ……。せめて飲んでくれりゃ諦めもついたのに」
 それからは気が乗らず、日本酒には口をつけなくなったという。 


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