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二つ並んだ布団

 数年前の話。
 嘉人さんが仲間同士で沖縄旅行をしたときの話だ。
 就寝にはまだ早い時間、ハメを外し足りない悪友たちは昼間の疲れもそこそこに、夜の街に繰り出そうと声をかけてきた。
 沖縄のあるエリアにはいまだ昭和の匂いが残る赤線地帯、所謂ちょんの間があると、仲間たちは知っていた。
 嘉人さんは眉を顰めながら詳細を聞くと、元々その予定だったのか、該当区域はホテルより近かった。
「最初からそのつもりだったのか」  
 仲間たちのバイタリティーに呆れながら、嘉人さん自身も興味があった。不純な目的ではなく社会勉強のため、と嘉人さんは強調する。
 車で二十分ほど走る。大通りから路地に入ると、存在を知らなければ決して見つけられない一画があった。
 薄暗いエリアに南国風の平屋がひしめきあい、どこも老朽化がすすんでいたという。『×××社交街』と色褪せたステッカーが崩れ落ちそうな小屋に貼られてあった。
「本当にここなのか?」
 そう尋ねる嘉人さんに友人は路地の奥を指さした。
 視線をうつすと、平屋の半開きになったドアに女性が佇んでいた。
「よく見えないな」
「目の前にいって確認するんだよ」
「好みじゃなかったら?」
「スルーするに決まってるだろ」
 集合場所と時間を決めると、仲間たちは好色な笑みを浮かべて通りを散策し始めた。
 嘉人さんも置いてきぼりを食らわぬように歩き始めたものの、気恥ずかしさを感じ、佇む女性たちとろくに目もあわせられなかったという。
 そんな嘉人さんをよそに仲間たちは平屋へ消えていく。
 どうやら十五分五千円というシステムであるということは聞いたものの、到底入る勇気はなかった。
 下半身の疼きはなかったのですか?
 と尋ねてみると彼は小さく首を縦に振った。
「でも……僕は苦手なんです、欲望を表に出すのって」
 ゆえに嘉人さんは歩き続けた。
 閉店しているのであろう、戸口に板が張られた家屋も多い。それどころかどう見ても民家が時折混じっていた。
 道は碁盤目状でなく不規則で油断すると迷ってしまいそうだった。
 汗を垂らしながら赤線通りをあてもなく彷徨っていると、自分は何をしているんだろう、と嘆きたくなったという。
 女性とは目をあわさず、民家だけを眺めながら歩いていると、ふと「どんな人が住んでるんだろう?」と気になった。
 普段ならそんな失礼なマネはしないが、どこかヤケクソになっていたせいか嘉人さんは明かりのついている家々の窓を覗きこんでいた。
 だいたいがいかにも田舎な、「おばあちゃん家にありがちな居間」だったという。
 集合場所に向けて歩き始めると、嘉人さんの目がとまった。
 窓から覗き込んだ居間。
 二つ並んだ布団。人のサイズに膨らんだ布団。
 顔がある位置には、遺体にされるように、白い布がかぶされていた。
(お葬式?)
 だが葬儀にいるはずの弔問客も親族もいない。人の声がしない。足音しかしない。
 嘉人さんが背筋に冷たいものを感じ、足早にその場から逃げ出した。
 後ろから人がついてくるような気がして仕方がなかったという。

「今でもあの時の、異質な居間の光景は忘れられません。あれは何だったんでしょう」
 嘉人さんは旅行後に調べてみたが、どんな情報もヒットしなかったそうだ。仲間たちもそんなものは見ていないという。


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