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八王子在住

 大学に入学したばかりの頃、吉木さんは友人同士でドライブに出かけたという。
 ドライブをスタートして一時間ほどで道に迷った。
 吉木さんは生まれも育ちも八王子。選んだ大学も八王子にある創価大学である。
「いくら慣れていない運転だからって、迷うなんて考えづらいんですけど……」
 同乗していた友人とあっちだこっちだと車を走らせていると、気づけば行き止まりとなっていた。
 車をバックさせようとすると、吉木さんは気づいた。
「友達と顔を見合わせて、真っ青なりました。あぁ呼ばれたねって……。知ってます? 八王子城跡って」
 有名な心霊スポット、八王子城跡のことである。 
 私が頷くと吉木さんは苦い顔をしたまま続けた。
「実は心霊スポットなんて地元の人間は怖がってなんかいないって聞くじゃないですか? 私も基本的にはそう思うんですが、あそこだけは違うんです。あそこの夜の空気だけは絶対違うんです。面白半分で行くのは絶対やめた方がいいですよ」

 × × × × × ×

 五藤さんは学生の頃、嫌な先輩がいた。
 高校の先輩だったのだが、同学年には軽んじられるので嫌と言わない年下を従えるタイプだった。
「優しければいいんですけど、めっちゃ粗暴で。車出させるくせして飯も奢らないんですよ」
 高校を卒業してからフリーターを続けていた先輩は暇になると五藤さんを呼び出した。
「本音は断りたいんですけど、僕あんまり人に怒るの得意じゃなくて……。嫌なんですよ、人が怒ったり怒鳴ったりしているシーンって。例え映画とかドラマでも苦手なんです」
 その原因は中学の時に死んだ父親にあるだろうと五藤さんは自己分析をしていた。
 ともかく五藤さんは大学一年の前半、同級生たちよりも先輩と多くの時間を過ごした。それは非常に苦痛だったという。
「まぁ先輩もずっと嫌な奴じゃないんで、会うことがすごく嫌って訳じゃないんですけど、大学の周りはみんな着々と友人関係を築いていっているっていうのに、自分だけ地元の先輩に振り回されている状況が嫌で嫌で……」
 その日も断れず先輩の言うがまま車を出した。
 八王子郊外のゲームセンターで遊んだ帰り道、先輩が車中で心霊スポットに行こうと言い出した。
 渋る五藤さんに先輩は「近くにあっから」と説得したという。
「もう十二時も回っていたんで帰りたかったんですけど、帰り道の途中だったんで承諾したんです。全然行きたくなかったんですけど、十分くらいで終わるっていうんで、じゃあいいかって」
 大人しく従い、車を走らせる。 
 先輩が言う心霊スポットとは、とくに何かしらのイワレがある場所ではなく二ヶ月ほど前に死亡事故があったただの路上だった。事故も轢き逃げ等の悲惨な類ではなく居眠り運転で、警察の事後処理も全て終っている。
「まぁ東京とはいえ車社会なんで、そんな珍しいわけでもないんですけど。きっと先輩は女の子と肝試しする機会があれば活かそうと、そのための下調べだったと思います」
 
 車を止めると、当然ではあるがただの路上だった。
 道端に電話ボックスと街灯。
 事故があっただけの路上に不気味さは感じられなかった。
 だが先輩は勇敢な行為をした英雄のように証を欲しがった。写真を撮ってくれと五藤さんに指示した。
 まるで自分が心霊を退治したかのような表情を浮かべる先輩に、五藤さんはカメラを向けた。
 心底馬鹿らしかったという。

 撮った写真を見ると、電話ボックスのガラスにどうにも顔のようなものが写っている。
 アップして確認する。鬼の形相をした五藤さん自身の顔が写っていた。



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