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別に何もしてないんですけど

 後輩の彼女から半年前ほどに聞いた話。
 彼女は一ヶ月前より繰り返し同じ夢を見ているそうだ。

 夢の舞台は彼女のアパートの入り口。
 そこに木箱を抱えた老婆らしき者が立っているという。
 腰まで伸びる白髪の真ん中に、どろどろに溶けた顔が見える。
 上からゆっくり塩酸をかけたように、てかった目蓋が瞳の大半を覆い、鼻も頬も顎まで垂れている。五円玉の穴のような隙間が「ふひゅーふひゅー」と息していることからそこが口だと伺えるそうだ。
「先月から毎晩見るんです。別に何もしてないんですけど……」
 後輩が心配だからと泊まった日だった。
 彼女は人がいる安心からかすぐに寝入った。しかし後輩は普段夜更かしをするタイプなのでなかなか眠れない。長い時間ベッドで寝返りをうつが眠気は訪れる気配がなかった。
 コンビニで酒でも買ってくるか……。
 財布を探していた矢先、ドアノブが動いた。
 がちゃがちゃがちゃがっちゃがっちゃ
 まるでこじ開けそうな力の入り具合だったという。
 音が止んでからドアスコープを覗くと、右上部が欠けた墓石が立っていたそうだ。
 後輩はベッドに戻り、夜明けまで彼女にくっついていたという。
「それで相談ってわけじゃないんですけど……、どうしたらいいんでしょうか?」
「思い当たること、本当にない?」
 俯いた彼女は、頭をかしげながら言った。
「強いて言えば……先月彼とキャンプに行ったんです。河原で二人で火をくべてカレー作って。その時に焚き火の風よけに、石ないかなぁって探してたらちょうどいいのがあったから。後から考えるとその脇に菊の花束があったような……」
 後輩の顔はみるみる青ざめていった。
 悪びれず、彼女は続けた。
「けど運んだだけで、火をつけたのは私じゃないし……」
「たぶんそれじゃない?」
 と半ば呆れながら私は答えた。
 お祓いを進めたが結局後輩は彼女と別れてしまい、現在の状況はわからない。

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