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電話

 その日の井町は疲れていたそうだ。
 昼から続いた打ち合わせ、会社に戻ってからの事務処理。飯の時間もないほどの忙しさで、会社を出る頃にはすでに十時を回っていた。
 駅前のガストでチキン南蛮を食べよう、満員電車の吊り革に掴まりながら井町の腹は決まっていた。
 最寄りの駅に着いた。
 急ぎ足で目当ての店に向かう。
 入り口を塞ぐように、自転車を片手で抑えながら電話している女がいたという。
 女が耳に当てているのは紙コップだった。
 コップの底には糸が出てあり、先にはガストの看板に繋がっていたという。
「でさぁ、彼がいなくなってさぁ、笑っちゃうんだけど、骨がさぁ骨が見えるのよぉ」
 窓から、怯えた目をする店員が見えた。
 井町さんは逡巡した末、声をかけた。
「ちょっとどいてもらえませんか?」
 女はゴミに群がるカラスを見るような目つきで井町を見たという。
 あの、害獣に向けるような、一切の容赦のない「消えればいいのに」というあの目つきだった。
「笑うついででさぁ、また笑っちゃうんだけど、私のとこにくんだよね、みんなころしてやるよ」
 女には到底出せないような低い声だったという。
 井町は回れ右をして、立ち食い蕎麦で夕飯を終えた。

 東京ってやっぱ怖いわ、長野出身の井町は深い溜息をついた。

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