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あけてくんしゃい

 下平さんが遅めの昼飯を買いにいった時のことだ。
 会社を出て十分ほどのチェーン弁当屋に向かう。
 夏場のことで、夕方だというのに陽はまだ強く照らしていた。濃い影ができていた。
 近道として裏通りへ入ると、三叉路に背の低いお婆さんが首を左右に動かしていたという。
 下平さんが近づくと、お婆さんはつつつ……と近づき、ペットボトルを差し出した。
「これ、おにーさんこれあけてくんしゃい」
 入れ歯がないのか、枯れた花のような口から発される言葉はひどく聞きづらかったという。
 いいですよ、と下平さんは受け取り、ペットボトルの蓋を回した。
 力をこめる必要はなかったそうだ。
 ペットボトルは元から締まっていなかった。
 下平さんは押し付けるように返すと、お婆さんはペットボトルを逆さにした。当然、ぼとぼとと乾いた路面に水は零れ落ちた。
 途端、下平さんは影が一つしかないことに気づいたそうだ。
「これで、らくになれんりゅ。おかげさんです」
 お婆さんは膝に手をついて礼をした。
 曲がった首は溶けた飴のように垂れ、そのまま地面に落ちた。
 下平さんの足元からお婆さんがニタァと「おかげさんでしゅおかげさんでしゅおかげさんでじゃまができましゅ」と嬉しそうに笑ったという。
 弁当を買わず、下平さんは逃げた。
 以来その裏通りは歩かないそうだ。

 都内、四谷付近での出来事だったという。

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