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風呂にまつわる怖い話

 五年ほど前に働いていた職場で、後輩に大場という男がいた。
 彼は不潔さを豪胆である証拠と思っていたようで、爪楊枝で歯垢をそぎ落とすおぞましい場面や、耳垢を指でほじくって匂いを嗅ぐという凄まじい場面を、やや誇らしげに周囲に見せつけていた。
 冬になると彼のジャケットの肩には雪のようにフケが降り積もっていた。
 もちろんフケが出ることは乾燥と関係があるので一概に不潔とは言えない。
 だが身だしなみというものがあるので一応注意すると、大場は「わかりました!」と親指を突き出してきた。いちいち仕草が大きい男だった。
 翌日からは確かにフケの痕跡は見られない。
 だが聞かされた解決策は眉をひそめるものだった。
「風呂に入るじゃないスか。その時に体を沈めて髪を突っ込むんです。ちょうど目と鼻と口だけが出るような格好で、髪は全部お湯に浸して。そんでがーっと両手で髪を掻き毟ると気分がすうっとするんスよ」
「……お前の後に入る人は? 実家暮らしだろ」
 はっはっは! と大場は感情がろくに篭っていない笑いで返答した。
 無論、女性社員たちからは蛇蝎の如く嫌われていた。
 
 週明け、ゲッソリした顔で大場は出社してきた。
 昼休み時に事情を聞くと、大場はカレーをほお張りながら答えた・
「昨日もいつも通り、風呂場でフケ落とししてたんスよ。顔だけ出してぷかぷか湯船に浮かんで、あぁいい気分だなぁって髪をボリボリやってました。ふわーっと湯に汚れが溶け落ちていく感覚が気持ちよくって寝ちゃいそうでした」
「その話は飯中じゃないと駄目なの?」
「ははっ」
 大場は私の抗議に取り合わなかった。
「熱くなってきたからもう十分かなって身体起こそうとした時、髪をがっと掴まれたんスよ」
 大場は抵抗しようとしたが浴槽内では腕が回せず、背中に手を回せない。
 ふんばる場所もなかった。
 ぐるん、と首が後ろに反った。
 鼻も口も湯船に沈み、生ぬるい湯が喉に流れ込んできたそうだ。
「溺死って風呂場でもできるんスねぇ」
 もがきながら大量に湯を飲んだ。髪はがっしり掴まれたまま放されない。
 死が迫ってくることを大場は実感したという。
(死ぬ)
 その時、湯船から引っ張りあげられた。胃に入った湯が猛烈な勢いで口から飛び出した。
「かーちゃんが助けてくれました」
 風呂場でふざけていたと思った大場の母親は、呆れつつも叱りつけたという。
「いい年こいて何やってんだいって。けど俺は嬉しかったスね。げぼげぼ吐きながら『やっぱかーちゃんすげぇよ、ありがとうありがとう』とすげー久々に感謝しました」
 説教を聞きながら大場は不思議に思い浴槽を覗き込んだ。
 底の方に、大量の爪が溜まっていたという。

「ほんと、洒落になんなかったスよ」
 大場はそう話しながら平然とカレーを食べ終えていた。
 今考えると、大場は本当に豪胆だったのかもしれない。
 ただ神経が通っていないだけかもしれないが。


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コメント
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始めまして

大場さんって大庭さんじゃあないですよね?
自分の知り合いにしゃべり方とか色々似てたのでちょっとゾッとしました

2013-04-25 03:24 │ from mintiaURL

Re: 始めまして

コメントありがとうございます。

> 大場さんって大庭さんじゃあないですよね?

大庭さんではないですよ。
文中に表記される仮名は、元々の名字と一切関係ないものを使用しております。

ただ、こういう喋り方の人っていますよね。

2013-04-25 17:31 │ from 別府URL

そうですよね

わざわざコメントありがとうございました

そうですよね、実名使うわけないですよね(( ノД`)
消そうと思ったんですが、暗証番号入れてなくて(泣)
なんかすみませんでした

2013-04-28 00:48 │ from mintiaURL

子供の頃に同じようにしてて汚いから最後に入るのでお湯を抜く…排水口だかに髪が吸い込まれて溺れかけたわ
みんな気を付けよう

2013-09-03 18:22 │ from 名無しURL

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