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引きこもりのお兄さん

 峯田さんには十歳離れたお兄さんがいた。
 高校生活の三年プラス大学生活の四年。計七年も顔をあわせていない。
 峯田さんが高校に入学して間もなく、お兄さんは就職先での失敗を機にひきこもりになったという。
 理由を聞こうにもお兄さんは部屋から出てこない。
 強引に押し入ろうとするも、両親がそれを止めたという。
 深夜になると物音はするが声は聞こえない、そんな生活が卒業まで続いた。

 難しいとされた大学に受かったとき、押し寄せる充実感に耐え切れず峯田さんはお兄さんの部屋をノックした。
 ドアが開かれなくても良かった。
 その時は大声で喜びを口にしようと思っていた。ひきこもってからもお兄さんはお兄さんだ。一言「がんばったな」と言って欲しかったという。
 妹の合格を刺激に、再び外に出てくれないか、そんな計算もあった。
 しかし何度兄の名前を呼んでも反応はない。
 我慢しきれずにダメもとでドアノブを回した。
 開いた。
「お兄ちゃん、入るよ」
 部屋に足を踏み込むと、そこに兄はいなかった。
 暗い部屋に煌々とディスプレイが輝いていた。トイレかお風呂だろうか。
 けれど昼間に兄が外に出る訳もない。峯田さんは首を捻った。
(パソコンの中に飛び込んだのかな?)
 そんな途方もないことをぼんやり考えた。
 母親が出先から戻ってきてから、峯田さんは聞いた。
「ママ。お兄ちゃんどこ行ったの?」
「え?」
 お母さんは闇夜の猫のように目を見開いた。
「いないの?」
「うん」
 お母さんの表情は見逃しようがなかったという。
 寂しそうな、安堵したような、初めてベトナムコーヒーを口にした時のような、複雑な表情を浮かべたという。
 あんなに不可解な顔を人間はできるんだなぁと峯田さんは後から考えたそうだ。
 いまだお母さんのあの表情は忘れられない。実家暮らしの峯田さんはいつあの顔がぽっと出てくるか、不安でしょうがない。
 大学の卒業は半年後に迫っている。
 就職活動がうまくいき、社会人になる峯田さんは家を出ることになっているという。
 警察に捜索願いも出したが、いつまで経ってもお兄さんの行方は不明のままだ。

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>>妹の合格を刺激に、再び外に出てくれないか


ねーよ

2013-11-29 11:37 │ from 名無しURL

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