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しょうゆ顔、ソース顔……

 茶沢さんが子供の頃の話だ
 まだしょうゆ顔、ソース顔という言葉が死語でなかった時代。
 ちなみにしょうゆ顔とは、あっさりとした顔だちのこと。
 ソース顔とは彫りが深く、目鼻立ちがはっきりとした顔を指す。

 そこは変わった店で昼は駄菓子屋、夜は占いをやっていたという。
 もちろん近所の子供たちも興味はあるものの占い代は到底払えないので、もっぱら駄菓子屋として利用していたそうだ。
 茶沢さんはあまりそこの駄菓子屋が好きでなかった。
 家から遠いし、暗くじめじめ湿った空間が陰気に感じられたという。 
 なのでお菓子を買う時はスーパーに行ったそうだ。そこは清潔で不要な会話もなかった。
 それでも友達付き合いがある。
 遠足の前日、友人の栄子ちゃんにつれられて駄菓子屋に行った。
 栄子ちゃんは当然のごとく常連で、お菓子を選びながら店のお婆さんとたわいない話をしていたそうだ。そういうお店の人の馴れ馴れしさが、子供ながら茶沢さんは苦手だった。
 まるで「お行儀にうるさい親戚の人」のようで茶沢さんは話す気になれなかったそうだ。
 手持ち無沙汰にあちこち触っていると、案外に視線を走らせていたお婆さんに怒鳴られた。
「おめぇ、なんら! 泥棒なんけ!」
 茶沢さんは首を振った。
 お婆さんの、栄子ちゃんに見せる表情との違いに、茶沢さんはすっかり怯えてしまったという。
 仕方なくぼうっと立ったまま待つが、話は終わらない。
「おめぇはしょうゆ顔らねぇ。将来いい旦那さんをもろて、親孝行できんねっか」
 えへぇ、なんて栄子ちゃんは笑っている。とてつもない居心地の悪さを感じ続けた。
 耐えられなくなった茶沢さんは、
「栄子ちゃん、もう行こうよう」
 そう囁きながら袖を引っ張った。
 えー、まだ選んでるからぁ、栄子ちゃんは暢気に言う。
 もう一人で帰ろう。
 そう決めた茶沢さんに「おめぇ」とお婆さんは声をかけた。
 お婆さんの化膿した傷跡のような瞳が、ぎろっと睨む。
「おめぇは塩酸顔らな。どうしようもねぇ。嫁になんのも、人様の為になんのも、諦めれ」
 唐突な言葉をぶつけられ、茶沢さんはどんな顔をすればいいのかわからなかったという。
「迷惑かけねぇうちにさっさとどっか行けて」
「……」俯いた。
「さっさと行けぇ!」
 茶沢さんは駆け出し、二度とその駄菓子屋に近づかなかった。

 栄子ちゃんとは中学生になるにつれ、次第に疎遠になっていった。
 その後茶沢さんは上京し、故郷には盆と暮れにしか帰っていない。
 三年前に帰省した時、地元の友人より長らく忘れていた栄子ちゃんの噂を聞いたそうだ。
 高校を卒業後、三つ上のフリーターと付き合い始めた。親の反対を押し切って男と同棲し、半年後にパチンコで負けて逆上した男に撲殺されたという。
 男は赤く熱したアイロンを、悶絶する栄子ちゃんに押しつけ続けた。
 我に返った男が救急車を呼んだが、時はすでに遅し。可哀想なことに病院に運ばれた時にはすでに息絶えていたそうだ。
 栄子ちゃんの顔はまるで塩酸をかけられたかのように溶けていたという。

 どうしてお婆さんが茶沢さんに『塩酸顔』と言ったのかは結局今でもわかっていない。
 駄菓子屋があった場所はいつのまにか更地になっており、歳を考えればとうに亡くなっているはず。悔しそうに茶沢さんは首を振った。
「あのババァが変なこと言ったから、栄子ちゃんは酷い死に方することになった……バカみたいだけど、そう思えて仕方がないの」
 どうしてあんなことを子供に言ったのか、その理由が知りたいそうだ。


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コメント
非公開コメント

なんで茶沢さんじゃなくて栄子ちゃんなんだよ。

2013-05-25 17:22 │ from 名無しURL

アイロン火傷と塩酸は関係ないのに無理矢理結びつけ過去の恨みを根に持つ女か…怖っ

2013-09-03 17:13 │ from 名無しURL

No title

※2
>栄子ちゃんの顔はまるで塩酸をかけられたかのように溶けていたという。

2014-04-05 00:46 │ from 名前はまだないURL

No title

喋り方は、めぞん一刻の五代の婆さんみたいなんだがな。

2014-04-16 17:38 │ from 名無しURL Edit

Re: No title

> 喋り方は、めぞん一刻の五代の婆さんみたいなんだがな。

めぞん一刻の作者の出身地と、茶沢さんの地元は一緒のようです。

2014-05-27 02:31 │ from 別府URL

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