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以来、道案内は二度としない。

 三河さんは学生時の夏休み、お婆さんに道を尋ねられた。
 人の良い三河さんはいいですよと答え、お婆さんの突き出したメモに書かれた住所を確認した。
 この道をまっすぐ歩いて信号を右に曲がって……三河さんは汗をかきながら説明したそうだ。
 その時、雲が通り過ぎた。
 陽で影になっていたお婆さんの顔があらわになった。
 三河さんは一度メモに目を戻してから、再びお婆さんを見た。
 心臓が誰かに掴まれ、無理やりに動かされたようだったという。
 お婆さんの顔は異形だった。
 写真を滅茶苦茶に破き、それをジクソーパズルのように繋ぎ合わせたような、バランスの狂った顔だった。
 かさぶたのような瞼の下から眼球だけがやけに生々しく、猫目を思わせるようにぎらぎらと光っている。視線は三河さんをしっかりと見据えていた。
 視線に気づいたのか、うんうんと頷いていたお婆さんの身体が、ぴたっと止まった。
 次第に、お婆さんの顔はロウソクが溶けるようにゆっくりと地面に落ちていった。
 鼻が地面に落ち、はねて靴に当たった。
 三河さんは涙を浮かべながら走って逃げたそうだ。
 以来、道案内は二度としない。

「親切は死者の為にならないのですよ」
 物静かな三河さんだったが、この時は裏声になるほど力が篭っていた。私としても同感である。
 血族以外の死者に親切にして、いい結末になったという話を私はいまだ聞いたことがない。


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