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漫画喫茶

「最近のオススメは山賊ダイアリーですね、まだ三巻しか出てないですけど面白いですよ」
 広沢君は大の漫画好きだ。
 私も漫画は好きな方なのでよくオススメ本を尋ねる。
 広沢君の蔵書は、それはもう凄い量なのだが、住まいは1Kと置ける量は限られている。
なので気になる本は買わず、漫画喫茶で読んでから購入するか決めるという。
「一度読んだやつなのに買うの?」
 私がそう尋ねると広沢君は鼻で笑った。
 続けた説明はなかった。
 たぶん私が馬鹿げた質問をしてしまったのだろう。

 広沢君は決まった漫画喫茶は作らない。「店員に顔を覚えられて陰口を言われたら嫌だから」だそうだ。
 その日もバイト帰りに初めて目にした漫画喫茶に入ったそうだ。
 お目当ては漫画紹介ムック「このマンガがすごい!」にて絶賛されていた本だった。
 店内は漫画喫茶によくあるように暗かった。
 格段気にせずお目当ての本を探す。
 その時、天井裏を走る振動があった。
 ネズミが走るような軽い音ではない。人間が何かを追いかける時にたつ、小走りのような音だった。
 はて上の階はあったかな? そんな疑問も漫画を見つけると吹き飛んだ。
 個室席に身を沈めるとさっそく本を開く。

 ところで。
 私も行ったことはあるが、漫画喫茶の個室は<仕切り>と天井にはややスペースが開いている。
 これは法律の関係で決まっていることなのだそうだ。
 しかしそれでも個室の扉は基本的に高いので他の客が覗くことはできない。

 物語に没頭した広沢君は一巻をすぐに読み終え、パソコンの置いてあるスペースの脇に本を積んだ。二巻目を手にした時に気づいた。
 パソコンのキーボードから、細長い黒髪が飛び出していた。
 覗き込むと、キーとキーの隙間から、髪がゴキブリの触覚のように二本飛び出していたという。
 店員の雑な掃除に舌打ちした。
 そのままにしておくのも気持ち悪い。かといって自分で抜くのも嫌だ。
 店員を呼ぼうと広沢君は顔をあげた。
 個室と天井の間に、斑に毛のはげた女の顔があった。
 身長が180センチはないと覗けない高さだった。
 しかし女は首を伸ばし、顔を上から個室に突っ込んできたという。
 髪が上から垂れ、何本も何本も音も無く抜け落ち、広沢君の膝の上に溜まる。
 真っ赤に充血した眼球が飛び出し、水滴のように床に零れ落ちそうになっていた。
「イッショニイヨウ」
 意識がある広沢君が最後には見たものは、女が「ラ、タ、ラ」と笑うシーンだったという。
 店員から精算して欲しいと起こされたのは翌朝だった。
「気絶してた時間も換算されるから、利用料金、たっかい金額とられましたよ」
 いや、それはクレームつけなよ。と私が忠告すると広沢君は首を振った。
「もちろん言いましたよ。けど鼻で笑うだけでした。僕思いましたよ、『あ、頭いいな』って。だって常識からしたら、幽霊のせいで気絶した。そのせいで意図しない時間いた。そんな言い訳通じないですもの。店員はたぶん、知ってたんですよ、女のこと。知ってても、店の利益になるから放置してたんですよ」
 私は唸った。
 その店を教えてくれとお願いすると、広沢君はヒントだけをくれた。
「新宿の、漫画喫茶です」
 私はまだその漫画喫茶を見つけられていない。

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