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ゴミ捨て場にて

 中野の焼き鳥屋で知り合った、浜山さんから聞いた話だ。
 浜山さんは現在単身赴任で東京に住んでいるそうだ。
「一人暮らしは大変だろ、洗濯もしなきゃ溜まってくし、誰かと話したかったらこうやって外に出なきゃいけねぇし」
 なかなかに苦労をされている浜山さんだ。コワイ話はないか、そう水を向けるとゴミ捨て場にまつわる話を教えてくれた。
 アパート脇の、指定されているゴミ捨て場は無法地帯だったそうだ。
 十メートルも離れていない隣のゴミ捨て場はキチンとしているのに、そこの場所だけはルールを守らない人間が集まるのか、不法投棄が目立つゴミ捨て場だったという。
「常識ない奴らが、手軽にぽいぽい捨てていくんだよ」
 粗大ゴミのシールが貼られていないPCモニタ、大量のVHSテープ、季節はずれの扇風機……。近隣の住民は学生が多いと聞く。
 やりたい放題のゴミを見る度に浜山さんは眉を顰めていた。
 ある日を境に、異変が起きた。
 分別されていなかったゴミは全て一つの袋にまとめられ、『分別は徹底してください』と張り紙がされてあった。
 長い間収集されず放置されてあった粗大ゴミも消えていたそうだ。
 役所の人間ではないなと踏んだが、出勤時にあっさり正体はわかった。
 ゴミ捨て場の前で、通りがかりと思われる女子高生から挨拶されている好々爺が、ゴミ捨て場を清潔にしてくれている人だった。
 七十歳は超えているだろうお爺さんは、陽射しに微笑みながら「おはよう」と返していた。
 浜山さんもなんだか無視できず、女子高生に続くように、会釈をしながら通り過ぎた。しかしお爺さんは見ていなかったのか、無表情のままゴミ捨て場を箒で掃いていた。
 それ以降、度々お爺さんを出勤時に見かけることになったそうだ。ゴミ捨て場は寝転べそうなほど清潔になっていった。
 だが気になることは一つあった。
 見かける時には、お爺さんはゴミの分別をしていないのだ。
 予想するに早朝からやってきて、燃えるゴミ燃えないゴミあるいは粗大ゴミを分別しているのだろう。
 浜山さんはだんだん後ろめたくなっていったという。
 近所のお爺さんに任せきりで、利用者である浜山さんが心地よく眠るとは、間違っていないだろうか。
「手伝わなくては」
 そう浜山さんは思い立った。
 流石に会社のある日には余裕がなかったので、土曜日の早朝、浜山さんは早起きをして待っていた。
 ただ自分から手伝うと名乗りでることは、なにか偽善者のように思われ気恥ずかしい。そこで、偶然通りがかったていをとり、自然に手伝うつもりだったという。
 部屋で待機しているとゴミ捨て場から物音が立った。
 静かな朝だった、
 慌ててサンダルをつっかけ外に出ると、ゴミ捨て場にはすでにお爺さんはいた。
 タイミングは遅かった。
 すでに話しかけられる雰囲気では到底なかった。
「目ぇ、見りゃあ、わかるよ。おかしいのが。ありゃボケてるんじゃねぇ、ナチュラルにおかしいんだ。おかしい奴は人前でいい人みたいに演じねぇしな」
 お爺さんは一心不乱にゴミ袋を開けるとかき混ぜる。
 その中からビニール袋を取り出す。ゴミ分別と同じように、目的のものを選んでいた。
 袋に顔を突っ込むお爺さんを浜山さんは息を呑みながら眺めた。
「ちゅーちゅー」
 遠目でも、お爺さんの口元にあるものが分かった。
 女性の生理用品を吸っているのだ。
「……何やってんですか」
 浜山さんが声をかけるとお爺さんは振り向いた。
 恍惚とした笑みで、浜山さんに生理用品を差し出した。「んんんん?」まるでお酒を勧めるかのように手振りだった。
 どす黒い唇から、ぼとっ、お爺さんの足元に落ちた。それがなにかは考えたくなかった。
「この時間なら、お前さんもこれ目当てじゃろうて」
 お爺さんの手元にはすでに蝿がたかっていた。
 浜山さんは「汚さないでくれ」とだけ言い残し、その場を去ったという。

「関わりあいになりたくなかったんだよなぁ……。そのお爺さんか? まだ元気に、通りがかりの女子高生やら主婦やらと仲良く話してるよ」
 早く単身赴任が終わって地元に帰りたいよ、浜山さんは赤ら顔で呟いた。


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